師匠と弟子
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アルカの引き攣ったような声が聞こえた。きっと、ひくりと口角を上げているだろう。
こんな状況ながら、“引き攣る”余裕がアルカに戻ってきている事にミラは少し安堵する。
「アルカ!」
《おうよ、行くぜ!最初の方は共通だから解るな?》
「うん、大丈夫」
元素魔法は詠唱が長い。
魔法名――――――例えば上記の大火大蛇、というワードだけでは発動せず、そこに行きつくまでに長ったらしい詠唱は絶対に必要なのだ。詠唱は四元素バラバラだが、アルカ曰く“1番長いのは威力の問題か、大海”らしい。
アルカの扱う大火と大地は長くもなく短くもなく、の丁度中間らしいのだが、二元素分の詠唱を覚えなくてはいけないから大変だ、と呟いているのを聞いた事がある。
「“紅ノ熱、高キ光、共ニ並ブハ猛ル赤……三位ヲ一体トシ、赤ク光ル熱ヲ構成スル”」
ミラがこれをこの短時間で覚えられたのは、アルカのサポートがある為であり彼の魔法をいつも横で見ていたからであって、それが無かったら何を言ってるのかすら解らなかっただろう。
これをどんな戦場でも冷静に、一言一句間違う事なく詠唱しなければ魔法が使えない3人はきっと大変なんだろうな、と思いつつ、続ける。
「“構成サレシ紅蓮、光ト熱デ存在ヲ示ス赤ノ元素ヲ形ニ…与エルハ不動、動カヌ武具”」
ここでようやく、魔力が炎に変えられる。
これを一瞬のうちに遣って退けるのだから、本当にあの3人は凄いと思う。特に1番詠唱が長いと言う大海を操るティアは、そんな事を全く感じさせないスピードで、文字通りの矢継ぎ早に魔法を使っていく。
普段あんなにぽわぽわとして記憶力が低いと言われているルーも回復や防御を素早く使うし、アルカだって二元素分の詠唱を頭に叩き込んでいる。
そりゃ各元素に1人な訳だ、と納得する。そんな魔法をいろんな人が使えるようになったら魔法界が大混乱だ。詠唱に時間がかかり過ぎて、仕事にならない。
これも元素魔法が最大4人しか使えない事の理由なのかな、と考えていると、《ミラ?》と呼びかける声が聞こえた。
「あ、ゴメン。……“斬リ裂キ、貫キ、血デ染マル剣…ソノ形ヲ炎ヘト映シ、鋭イ刃ヲ紅蓮ニ包メ”」
炎が横に伸び、徐々に形を持っていく。
左はやや沿った鋭い刃に、右は炎の美しい装飾が目を引く柄に。刃は一回り、また一回りと大きくなり、ミラが柄を握ると止まる。
「“紅蓮一閃”―――――大火大剣!」
吼え、振り下ろす。
バッと飛びずさったエストを追撃するべく地を蹴り、炎の翼を大きく動かす。距離を詰め炎の剣を振るうと、エストはそれを杖で弾いた。そこからくるりと杖を回し、その先端を
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