師匠と弟子
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事も可能だった…その様相を、シグリット様は倒れたと……戦闘不能だと応諾しなかったのだろう」
「でもそれじゃあ、あの扉って……!」
ハッピーが叫び、何かに気づいたように言葉を止めた。それを聞いて、ナツ達も初めて気づく。
あの扉が、“塔の中にいる十二宮の全員の戦闘不能”を認めない限り術式で閉ざされているのなら、パラゴーネがこちら側についた時点で、扉は絶対に開かない不和の門と化したのではないか?と。
まず、ナツ達はパラゴーネに攻撃なんて出来ない。いくら所属するギルド同士が敵であれ、こんなにも情報をくれて協力してくれた彼女を今更敵だとは思えないし、思いたくもない。いくらパラゴーネが説明したって彼等の目に残り人数は見えないのだから、とりあえずは疑い何もしないだろう。もしそれが事実だと判明したって、絶対に戦う事だけはしない。
だから、パラゴーネは自分で自分を戦闘不能に追い込む選択をした。ナツ達に辛い思いをさせない為に、先に進んでもらう為に、自分が傷付くのを承知で。
「……ぅ」
「ルー!?」
小さく呻く声が聞こえて、ルーシィは咄嗟に横を見る。
両手の光が弱くなり始めたルーは額に汗を浮かべ、走り終わった後のように息を切らしていた。視界が霞み歪んでいくのを感じながら、苦しそうに呟く。
「もう、無理…止血までは…どうにか、出来たけど……」
「止血出来たなら十分よ!とにかく休んで」
「うん……ゴメンね」
ふわり、と緑色の光が消えたと同時に、ルーはふらりと倒れ込んだ。はあはあと息を切らし額に張り付いたエメラルドグリーンの髪を右手で払いながら、服の袖で汗を拭う。
ピ、ピ、とどこからか聞こえる残り時間がどんどん減る、今まで全く気にならなかった音が、今だけは無性に耳障りだった。
「くっ」
紅蓮の炎が勢い良く床の上を滑る。
杖の先を床に向けて風を発生させる事で飛び炎を避けたエストは、天井に頭をぶつけないように気を付けながらその高さを保ち、炎が消えたのを確認して、降りる。
「凄い…アルカ、いつもこんな炎を操ってるの?」
《んー……気のせいか、いつもより強いな。魔力の量に対して火力が増してる》
「どうして?」
《解んねえ。難しいのは考えねえに限る》
裾がボロボロになった紅蓮のドレスを纏うミラの言葉に、念話のようにアルカが答える。
アルカ本人は解らないと言っているが、実は理由は至って単純。2人の考えがおかしなまでにピッタリ合っている為だ。まあ、2人は恋人同士であるからそりゃそうだと言われればそうなのだが。
更にこの2人、片や引退しているとはいえかつては“魔人”と呼ばれたS級魔導士、片や辞退したとはいえ2年前にS級候補と呼ばれていた“地火の威武”。
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