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滅ぼせし“振動”の力を持って
彼と暴力事件
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 ある霧の濃い朝。


 人気の無い平原で何かを叩く音がし、空気が爆ぜる音が連続で響き渡る。荒くなった呼吸音とそれを整える物が聞こえ、また轟音が鳴り響く。



言わずもがな、海童が特訓している音だ。




「ふぅ……だ、あぁっ!!」



 拳で空気を叩いて衝撃波を放ち、



「お、らあっ!!」



 続いて足で蹴りあげる様に撃ち、



「ドオオォォォオッ!!」




 最後に怒鳴り声と共に飛ばす。音からするに威力の調整はまだ甘いが、タイミングや大まかな使い方は何とか出来てきている。
 余波で周りは削られ、木々も放つたび嵐の如く揺れる。それだけの攻撃をしながらも、海童はまだ加減して撃っている様に思えた。



 一通り終えたか海童は構えを解いて、腕に巻いてあった時計へ目線をやる。あと少しで、登校1時間前となる時間帯になっていた。




「そろそろ帰るか……」




 そばに置いてある荷物片手に、海童は寮へ戻る道を歩き出した。その道すがら、僅かに上を向き表情を歪めた海童が、悩みの種は尽きぬと大きく溜息を吐く。


 悩みのタネが尽きない原因、それは少し前のコダマとの買い物での、二回もしてしまったキスの事であった。



(アレから余り口をきいてくれないが……惚れている発言が本当なんじゃあるまいな?)



 前の親睦会前の廊下での会話で碓が言っていた、『お前に惚れているからだろ』発言をまさか本当ではないかと海童は疑うも、やっぱり有り得ないなと否定した。

 彼にとって春恋は、今も昔も身長や一部の事などでは逆転するが、基本姉の様な存在。きっと、規律を厳しく守る方で、不純異性交遊どうたらが許せないのだ。海童は自身の中で揺れていた考えを、否定してからそうまとめる。


 それに、口を聞いてくれないだけで授業で分からない事は教えてくれるし、飯に何か甘い物が仕込んである訳でも無い。アレ以来ケーキ一色弁当は出ていないから、放さない件は意固地になって話すタイミングが分からないだけなのだろうと、海童は思う事にした。



 ……鈍感とはかくも恐ろしい物である。





 海童が帰路に付いていたその時刻、春恋も朝練の為に外で素振りをして帰って来ていたばかりであり、汗を流す為シャワーを浴びていた。

 温かな流水を身に浴びながら考えるのは、海童を避け気味になり最近話していない事だった。



(私……どうしちゃったんだろ? カッちゃんは幼馴染で弟みたいな人・・・でも背が高くて雰囲気がそう思えないちょっぴり変な弟で……う〜……)



 自分で何を思っているか分からなくなり、春恋はじれったそうに顔
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