第八章
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多恵の言う通りだった。それを認める。
「同じね。何かまた同じになったわね」
「ええ。同じなのね」
「そう、同じよ」
実は千恵も多恵の持っていた自分へのコンプレックスのことは知っていた。それに対してあえて言うのだった。同じであると。
「私達は同じなのよ」
「同じなのね」
「どっちがどっちかってことはないのよ」
言葉を選んだ。上や下といった言葉はあえて避けたのだ。
「私達はね」
「そうね。一緒よね」
「生まれてきた時から一緒じゃない」
その通りだった。二人一緒に生まれてその時からなのだ。離れたことはなかった。それだけ強い絆で結ばれているのだ。双子だけに。
「今まで。それに」
「それに」
「これからもよ」
次に出た言葉はこれであった。
「これからも一緒よ。ずっとね」
「そうよね。ずっとよね」
多恵もまたわかった。千恵のその言葉の意味が。カクテルを飲むがその味はもう感じてはいなかった。千恵の言葉を聞くだけであった。
「お互いにずっとね」
「この世で二人だけじゃない」
二人の絆がさらに強調された。
「だから。これからも一緒にね」
「そうよね。一緒にね」
「ええ。だから今度ね」
「ダブルデートをなのね」
「そういうことよ」
そういうことと言うのだった。
「二人、いえ四人でね」
「ええ。ねえ千恵」
今度は多恵から言ってきた。
「何なの?」
「まだしてもいないけれど」
あらかじめといった感じで話すのだった。
「それでもね。またしよう」
「ダブルデートを?」
「ええ。ほら、やっぱり私達って」
話は戻ったがただ戻っただけではなかった。それは言葉の中に含まれていた。
「一緒じゃない。だからね」
「一緒だからなのね」
「そうよ」
それを強く千恵に繰り返す。先程千恵が彼女にしたのと同じように。
「一緒にね。いいわね」
「わかったわ」
姉もまた妹の言葉に頷いた。やはり二人は同じ姉妹なのだった。何時までも。
同じ姉妹 完
2008・3・8
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