第七章
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も入ったわ」
また多恵に告げた。
「あとはもう」
「寝るだけなのね。それでも待っていてくれたのね」
「それは・・・・・・」
「有り難う」
千恵が何か言う前に礼を述べたのだった。千恵が何かを言うとは思っていなかったのだ。
「姉妹だからよね。待っていてくれたのは」
「え、ええ」
何故か戸惑いながら頷く。顔を曇らせ、そこに強張らせたものも見せながら。
「有り難う。じゃあこれ」
「これ?」
「お土産よ」
言いながら出してきたのはブローチだった。小さな銀色の蝶のブローチだった。
「ブローチ・・・・・・」
「二つ買ったんだけれど」
見ればもう一つ出してきていた。それは金色の蝶のブローチだ。
「もう一つ。あげるわ」
「いいの?それは多恵が自分の為にって買ったんじゃ」
「それでもいいの」
笑顔のままで千恵に言うのだった。
「だって。こんな時間まで待っていてくれたから」
「そうなの」
「そうよ。あげるわ」
こう話しながら千恵の前にそのブローチを置くのだった。ティーカップの左に置いたのだ。
「このブローチね。よかったら着けて」
「銀色ね」
「銀色好きよね」
多恵も好きだからわかるのだ。双子で好みがそっくりだからわかっていたのだ。
「だからなのよ。それとも金色の方がいい?」
「いいえ」
多恵の今の言葉には首を横に振った。小さくであったが。
「有り難う。銀色好きだから」
「そうよね。よかったわ」
「有り難う」
また多恵に礼を述べてきた。
「着けさせてもらうわ」
「着けてくれるのね」
「これでお揃いよね」
また言ってきた。
「私達」
「そうね。金色と銀色」
蝶は同じだが色は違う。そうしたお揃いなのだ。
「その違いはあるけれどね」
「それでもお揃いね」
また言うのだった。
「私達は」
「姉妹じゃない」
ここで顔に僅かに、しかも一瞬だけ多恵の顔が曇ったのは彼女が妹に対して抱いているコンプレックスが出たからだ。明るい顔だったが不意にそれを思い出したのだ。それで自分の顔にその暗いものを出してしまったのだ。しかしこれはほんの一瞬のことでまた元に戻った。
「だから。いいのよ」
「姉妹だからね」
「ええ。他に何かあるの?」
「他に?」
「ないわよね」
妹に顔を向けて問うた。
「それは。ないわよね」
「そうね」
少し考えてから姉に答えた。目は相変わらずティーカップに向けている。
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