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同じ姉妹
第六章
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え」
 一応頷く。しかしその頷きは言葉も動作もはっきりしないものだった。
「そうね」
「お酒もよかったし」
「弓削君ね」
 千恵の方から名前を出してきた。
「彼は」
「ええ」
 千恵のその言葉に今度は多恵が頷く、やはりここでも千恵の気持ちには気付いていない。
「いい人みたいね」
「そうね」
 多恵に応えるその声も何処か虚ろなものだった。
「私もそう思うわ」
「私明日ね」
 ここで迂闊だったが明日の約束について言うのだった。
「彼と一緒に映画館に行くの」
「映画館になのね」
「ええ。パイレーツオブカリビアン」
 観に行く映画の名前を出した。
「それを観に行くのよ」
「そうなの。いいと思うわ」
「千恵もそう思うのね」
「うん」
 少しだけだが顔を多恵から背けた。俯いたままだったので多恵にはその顔がよく見えなかった。まるで彼女から隠すように背けていた。
「私も。そう思うわ」
「有り難う。千恵にそう言ってもらえると嬉しいわ」
 ここでは完全に姉妹になっていた。昔からいつも一緒にいる双子の姉妹に。あのコンプレックスは今は忘れてしまっていたのであった。
「それじゃあ。行って来るわね」
「楽しんでくればいいわ」
 こうも告げる千恵だった。
「ゆっくりね」
「ええ。あの映画かなり見応えあるそうだし」
 映画に関する話題に移っていた。多恵の中ではそうだった。
「今からとても楽しみね」
「私も。何時か観に行くわ」
「そうしたらいいわ。ところで千恵」
 相変わらず機嫌のいい状態で千恵にまた声をかける。
「帰ったらね」
「何?」
「一緒にお風呂に入らない?」
 こう提案したのだった。
「お風呂に?」
「ええ。久し振りにね」
 二人はこの歳になっても一緒にお風呂に入ることがあるのだ。そうした意味ではまだまだ女の子なのだった。大学生ではあっても。
「どうかしら」
「いえ、いいわ」
 だが千恵はそれを断るのだった。
「多恵が先に入って」
「嫌なの?」
「そんなのじゃないけれど」
 それは断った。しかしそれでもであった。
「けれど。それでも」
「そうなの」
 深くは聞かなかった。あえて千恵を気遣ったのだ。ただし彼女の内面については全く考えていない。
「それじゃあ。私一人で先に入るわね」
「そうして。この時間じゃ帰っても皆まだ起きているしね」
「そうね。それはね」
 左手の腕時計を見て応える。見てみればまだそんな時間だった。随分色々と楽しんでそれからまた飲んだのでかなり時間が経ったと思っていたがそれ程ではなかったのだ。
「まだたっぷりとあるわね」
「だから。別々に入りましょう」
 やはり顔を少し背けて言う千恵であった。
「それでいいわよね」
「そうね。千恵がそう言うのな
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