第三章
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とだし」
「随分と口が上手いのね」
「そう言われたことはないけれど」
それは否定するのだった。
「正直者だって言われたことはあるけれど」
「言うわね。あまりそうは思えないけれど」
口ではこう言っても何故か悪い気はしなかった。それは口車に乗っているのではなく彼の印象がよかったからだ。軽口であったがそれでも気さくなものだった。だからよかったのだ。
「それでさ」
「ええ」
彼の言葉を聞く。自然と身体も顔も彼の方に行く。
「常盤さんだったよね」
「私の名前ね」
「そうだよ。名前、それでいいよね」
「ええ」
にこりと笑って彼の言葉に頷く。頷いたその顔が少女めいたものになっていた。その大人びた雰囲気から少女のものが出ていたのである。
「それでいいわ。苗字はね」
「名前は?」
「多恵っていうの」
そのままの流れで彼に告げた。
「覚えておいて。名前は多恵っていうのよ」
「そう、多恵ちゃんっていうんだ」
「いきなりちゃん付け?」
またクレームをつける。しかしその顔は笑っていた。
「随分と図々しいわね」
「図々しいかな」
「軽いって言ってもいいわね」
「これでも謙虚で重厚だって言われてるんだけれど」
「何処がよ」
笑ってそれを否定する。
「逆にしか見えないわよ」
「また随分と言うね」
「言われる方が問題よ」
口ではこう言うのだが。気分は悪くはなかった。むしろ楽しいものだった。その楽しさを漢字ながら食べ物と料理を探す。そこにまた彼が出て来た。
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