第四章
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そうだったのだ。二人の手は相変わらず真っ赤なままだ。その真っ赤な手同士が触れ合って。それで熱いものと熱いものが触れ合ったのである。
「熱いのも当然ね」
「そうね」
「じゃあ。握ろう」
直樹の方から言ってきた。
「いや、握ってくれる?」
「言われなくても握るわ」
郁美の顔は真っ赤だが微笑んでいた。
「だって。私が言ったんだし」
「そういえばそうだったかな」
「言った本人が握らないと」
駄目だというのである。その真っ赤な顔で語っていた。
「駄目じゃない。そうでしょ?」
「いや、こういうは」
珍しいことに直樹が郁美に言い返すのだった。
「男の子が女の子にやるんじゃなかったっけ」
「そうだったかしら」
「そうだったと思うよ。だから」
「握ってくれるのね」
「うん」
にこりとした笑みのまままた郁美に告げた。
「それで。いいよね」
「嫌なんてとても」
また顔を俯かさせての言葉だった。
「言う筈ないじゃない。だから」
「握るよ」
「ええ」
またこくりと頷く。
「御願い。じゃあ」
「うん。いくよ」
握った。そうして握ると郁美の真っ赤な手は。やはり温かいどころではなく熱いものだった。その熱さが彼に手にも直接伝わってきた。
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