第64話 何時の季節も蚊は鬱陶しい
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るかもしれない。
結構危機的状況なのであった。
「皆のびちゃってるねぇ、幾ら突っついても起きやしないや」
「ほんまやなぁ。顔に幾ら落書きしても全然起きやしないわ」
「いっそ10円傷でもつけてみるかぁ?」
「少しは患者を労われ、このちびっ子ギャング共」
そんな隊士達をある時は棒等でつっつき、ある時は油性ペンで顔に落書きをし、またある時は頬に10円でひっかき傷を作っていたりしている三人のちびっ子ギャング達の姿があった。
言わずもがな例の三人トリオである。
「ってか、てめぇらは良く無事だったなぁ。隊士達がこんな状態だってのに―――」
「だって、私達あの後すぐに寝ちゃったもん」
「寝てたからってあれだけの惨劇があって起きなかったのか……神経が図太いと言うべきか超が付くほどの鈍感と言うべきか」
まぁ、患者の数が僅かに減ったのは不幸中の幸いとも言えた。こんな状態の中更に子供たちの面倒なんて見るのは余りにも辛すぎる。こんな所を攘夷志士達に見られたら一巻の終わり物である。
「しっかし情けない話ですねぃ。江戸の治安を守る俺たち真選組がよりにもよってお化けなんかにここまでやられちまうなんて」
「全くだ。隊の殆どが寝たきり状態なんて前代未聞だぞ。上の連中に知れれば確実に切腹もんだなぁこりゃ」
頭を抱えながらそう呟きながら土方は懐からたばこの箱を取り出し、中から一本取り出して口にくわえた。何とか大事になる前に事態を収拾しなければならない。それが出来なければ俺たちは終わりだ。
「とにかく、一刻も早くこの事態を何とかしなきゃならねぇ。まずは隊士達を動ける状態にして、その後にこのふざけた真似をした奴に落とし前をつけてやる」
「流石土方さんだ。お化け相手でも全く引けをとりませんねぇ」
「当たり前だろうが。天下の真選組がお化けなんぞにビビッてられっかってんだ!」
「うむ、トシの言う通りだ。俺たちは江戸の治安、そしてお妙さんを守る為に日夜死線を潜り抜けねばならないんだ。こんな所で何時までもくたばってちゃいかんのだ!」
何時の間に其処に居たのか。と誰もが突っ込みたくなるような感じに会話に割り込んできた我らが真選組局長の近藤勲。だが、そんな近藤に贈られるのは憧れの眼差しなどではなく、ただの冷たい視線だけであった。
「な! お、俺は違うぞ! お化けなんかにやられたんじゃないぞ! 俺は昨日マヨネーズにやられたんだ! だから俺はセーフだ! 問題ない! 断じて問題ない!」
「返ってお化けにやられてくれた方が言い訳しやすかったぞ。マヨネーズにやられる侍なんて聞いた事ねぇよ。」
心底泣きたくなってきた。声には出さないが心の中でそう土方は痛感していた。
「とにかくだ、このままじゃ埒があかねぇ。此処はシャマルを
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