DAO:ゾーネンリヒト・レギオン〜神々の狂宴〜
第十二話
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実際の所。
前回此処に来た時から、コクトの中には『恐れ』があった。《白亜宮》の奥へと進むことに対する嫌悪感と恐怖だ。あの時打倒したウォルギルは今だログアウトして来ていないし、もしかしたらいつか自分もそうなってしまうのではないか、という不安もある。自分たちを完膚なきまでに叩き潰した、《七剣王》の少女たちが恐ろしくもある。
だが、コクトの恐怖を確固たるものにしているのはそれらではない。コクトがこの場所に怖気を抱いたのはずっと前。
最初に、ラーヴェイとウォルギルと共にここに来たその時。三方に分かれて宮内を探索していたコクトは、見てしまったのだ。
真っ黒な空間で、虚空に向かってぶつぶつと呟く、巨大な、金色の人の頭部を。
後に、それが《冥刀》などと出自を同じくする《神器》、《原初の時を見た者》であることを知った。
不気味だった。《神器》……すなわちは神のもつ道具である、という事実に、疑問を抱かずにはいられなかった。あんな存在に神性が付与されているだと?笑わせるな――――。
コクトは、二度とここに来たくないと思っていた。ここでウォルギルを失った。セモンを失った。失ったモノの価値が重すぎる。
それでも。
それでも、取り返すためには動かなくてはならない。コクトは、《師匠》なのだ。年長者が年少組を助けるのは当然の理だ。
だからコクトは、恐怖と不安を打ち払って、《白亜宮》に再び足を踏み入れた。大丈夫、なんとかなる、と、セモンのように信じながら。
転移の光が消え去ると、その場所は暗い通路のようだった。どこか現実世界の、《ボルボロ》の実験室のような雰囲気もあった。
《白亜宮》なのに黒い、という矛盾。だが、コクトはこの場所が決して真っ白い、無垢な場所なわけではないと、既に知っている故に、疑問など持たない。
むしろここには、得体のしれない混沌が渦巻いているのだ。
「……前とは、違う場所に出たようだな」
隣で、ラーヴェイの声がする。他の仲間たちはいないようだ。どうやら、自分たちだけがここに飛ばされてきたらしい。
「前回とも違う場所だ。最初に来た時にも立ち入らなかったと思う」
「そうか……とにかく進もう。何かわかるかもしれない」
ラーヴェイと頷き合い、周囲を警戒しながら足を進める。
《白亜宮》の中では、常に誰かに見られているような奇怪な気配を感じる。その視線と同じ色の視線を、コクトは以前ここに来た時に、間近で受けた。
あの詐欺師めいた青髪の少女――――ノイゾ。彼女の目線は、最初に《白亜宮》に来た時に感じていた視線と、よく似ていた。
そしてそれとそっくりな気配が、今、強まっている。
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