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熱い手
第一章
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た。彼女達もそうそうベタな展開の恋愛なぞまず有り得ないとわかってはいるのだ。わかっていても憧れるのであるが。
「ないわよね」
「それでもね。やっぱり一途に」
「そう、一途によね」
 郁美はここで言い切った。
「恋ってやっぱり一途じゃないと駄目よね」
「そうそう、愛し愛されて何処までも」
「それこそってやつ?やっぱり」
「そうよね、一途ね」
 郁美は言い出した本人でありながら今の周りの言葉にうんうんと頷いていた。
「一途でないとね。愛する方もね」
「さもないと恋愛じゃないわよね」
「何処までも二人でね」
「そう、二人ね」 
 郁美はその二人という言葉にすぐに反応してまたうんうんと頷いた。
「二人なのよね。恋愛って相手がいないと駄目なのよね」
「当たり前だけれどね。ただ郁ちゃん」
「何?」
「今日の郁ちゃんちょっとおかしくない?」
「おかしいわよね、そういえば」
「ねえ」
 周りから言われだしたのであった。言われた郁美は少し戸惑った感じになった。
「そうかしら。私は別に」
「違うの?」
「全然いつもと一緒よ」
 場を取り繕って言うのだった。言葉が少し浮ついた感じになっている。
「何処か違うかしら」
「言われてみると別に」
「おかしくないけれど」
「そうよ。だから普通よ」
 さらに言い繕う郁美であった。
「ただね。それでもね」
「あんな恋愛したいのね」
「私はあのヒロインみたいに不治の病じゃないけれど」
 運動神経抜群である。この一年風邪一つひいたことのない健康優良児でもある。それは自分でわかってわきまえてはいるのである。しかしだ。

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