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戦国異伝
第百八十話 天下の宴その十二

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「徳川家は小さい、だからな」
「それで、ですな」
「このことも」
「そうじゃ、大きくなりのもよいが」
 家が、というのだ。
「まずは家の存続があってこそじゃ」
「まずは、ですな
「それが第一ですな」
「賭けるよりもあることじゃ」
 慎重な家康ならではの考えだ、彼は家が大きくなるのもいいがまずはその家があってこそだというのだ。
 それでだ、今もこう言うのだ。
「三河の西で生きるかどうかわからなかった時に比べるとな」
「今の我等はですか」
「そうじゃ、五十万石じゃ」
 それだけの石高があるというのだ。
「大したものではないか」
「だから、ですな」
「欲を出さずに」
「このまま生きる」
「それがよいのですな」
「そうじゃ、このままでよい」
 家康はあくまでこう言うのだった。
「だからな」
「我等が脇役でも」
「構いませぬか」
「五十万石からさらに大きくなれれば儲けものじゃ」
 この程度にしか考えていなかった、やはり家康は家があってこそだと考えているのだ。そこからなのである。
「ではな、生きるぞ」
「畏まりました」
「では」
 家康は勝つのではなく生きる為に戦おうとしてた。生きていればこそ、そう思うが故にだ。その考えで岡崎に戻り戦の用意をするのだった。
 信長は宴の後で信行と信広を城の茶室に招いていた、そしてだった。
 そこで二人の弟達に茶を出してからだ、こう言った。
「本願寺との戦まではな」
「はい、まだですな」
「時がありますな」
「公方様のことも気になるが」
「今は、ですな」
「政ですな」
「そうじゃ、御主達の力も借りたい」
 ここは、というのだ。
「特に勘十郎、御主にはじゃ」
「朝廷のこともですか」
「うむ、寺社のことも含めてな」
「法度をですな」
「それを出す」
 そうしてだというのだ。
「その詰めに入るからな、これより」
「だから、ですな」
「我等は暫しここに」
「残ってもらう」
 この安土城にというのだ。
「そのうえで色々と考えを出してもらう」
「畏まりました」 
 弟達は信長の言葉に同時に答えた。
「さすれば」
「そうさせて頂きます」
「頼むぞ、ではすぐにはじめる」
 その政を、というのだ。
「そしてそれを天下に出すぞ」
「大きいですな」
「今度はそうされますか」
「天下を治める為じゃ」
 だからだというのだ。
「天下を治めるのは政じゃ」
「武によって一つにしますが」
「治めるのはですな」
「政であり文じゃ」
 それ故にというのだ。
「国を治めるのはな」
「鞍に乗って国は治められませんな」
「その通りじゃ」
 信行の今の言葉にもだ、信長は答えた。
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