第百八十話 天下の宴その九
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「これもまた」
「はい、では是非」
「食わせてもらおう」
信長はこう言ってだ、実際にだった。
その鳳梨の椀を手に取ってまずは醍醐の中の鳳梨を箸で掴み口の中に入れた。そうしてこう言ったのだった。
「すっぱいのう、じゃが」
「それでもですな」
「甘い」
強い酸味と共にそれがあるというのだ、見れば信長の口は最初その酸味に口をひょっとこの様にさせていたがそれをすぐに笑みにしていた。
「その二つが共にあるわ」
「それがしも食してみて驚きました」
古田は微笑んで信長に答えた。
「その美味さに」
「左様でしたか」
「はい、ですから」
それでだというのだ。
「宴に出そうと思いました」
「醍醐等と共にじゃな」
「醍醐といいましても」
「左様、実は色々とあるのでおじゃる」
ここで近衛が醍醐について話してきた。見れば彼もその鳳梨と醍醐、それに他の果物の味も楽しんでいる。
「固いものもあれば」
「こうしたものもですな」
「この醍醐は柔らかいものでおじゃるな」
「そうです、これは蘇や酪も同じですが」
醍醐もだというのだ。
「その様に」
「そうでおじゃるな、だからこそ」
「この度は柔らかい醍醐にしました」
「これは南蛮でもあるとのことです」
利休がここで話してきた。
「しかも使う乳もです」
「牛のものとのことです」
古田は近衛にこのことも述べた。
「ですから」
「ほほう、そのこともあり」
「これにしました」
「ううむ、この様な珍味ははじめてでおじゃる」
近衛は唸る様にして味を楽しみつつ述べた。
「美味でおじゃる」
「左様ですか」
「これまでの馳走も見事でおじゃったが」
その中でもだというのだ。
「これはとりわけでおじゃる」
「この南蛮の菓子も」
山科はそちらを食べつつ言った。
「素晴らしいでおじゃる」
「いや、右大臣殿お見事でおじゃる」
「何から何まで完璧でおじゃる」
ほかの公卿達も言ってきた。
「これはまことに美味」
「実に」
「この宴は最高でおじゃる」
「最後の最後まで」
「それは何より。しかし」
信長は公卿達も満足していることには気をよくした。しかしそれでもここで顔を引き締めさせてそのうえ近衛に顔を向けて尋ねた。
「近衛殿、宜しいか」
「何でおじゃろう」
「この宴に公卿の方々にも来て頂いていますが」
皇室からも来られている、流石に帝は来られていないが。
「しかし高田殿」
「実はあの御仁は」
その信長の問いにだ、近衛も難しい顔で答える。
「麿もよく知らないのでおじゃる」
「近衛殿も」
公卿を束ねると言ってもいい近衛がと言う信長だった。これは五摂家筆頭の近衛家の主ということからだけではない、その資質からもそうしていることだ
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