第百八十話 天下の宴その八
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それを見てだ、誰もがこう言うのだった。
「面妖なものじゃな」
「こちらの牙みたいなものの中に果実と白いどろりとしたものを入れたものもわからぬが」
「どれもな」
「一体何じゃ」
「この狐色のものですが」
宴の仕切りを任されていた明智がここで話してきた。
「南蛮の菓子です」
「何と、南蛮のものですか」
「この菓子は」
「何とまあ」
「そうしたものまで」
「堺より取り寄せました」
そうしたものだというのだ。
「あの町にいる伴天連達に頼み」
「流石は明智殿」
「そうまでされるとは」
「いや、全く以てお見事」
「明智殿ならではです」
皆感嘆の声を漏らすばかりだった、そしてだった。
何か牙の様な刺の多くある果物の皮、椀の様になっているその中に白いどろりとしたものがありさらに様々な果物が切られたものが白いものと混ざって入れられているものを見てだ、近衛がいぶかしみつつ言った。
「この白きものは醍醐でおじゃるな」
「はい、あと南蛮のものもこちらも」
明智はここで言った。
「古田殿が手配してくれました」
「明智殿ではなく」
「そうです、茶菓子は荒木殿で」
こちらは彼が、というのだ。
「これもまたです」
「古田殿がか」
「手配して下され考えて下されました」
食材を集め料理も考えたというのだ。
「左様です」
「これは醍醐でおじゃるな」
近衛はまずはその白いものを見て述べた。
「しかも微かにでおじゃるが」
「お気付きですか」
今度は古田が近衛に応えた。
「そのことに」
「醍醐の中に蜂蜜も入れておられるな」
「はい、そうしました」
「そして果物は」
四角く綺麗に切り揃えられて入れられているそれ等はだった。
「琵琶、柿に」
「はい」
「そして最後は」
「琉球のものであります」
「何と、あの国からのものでおじゃるか」
「はい、やはり堺にありましたもので」
こう話すのだった。
「鳳梨というそうです」
「鳳梨とな」
「そうです、非常に珍しい果物ですが」
「これをでおじゃるか」
「はい、琵琶や柿と共に切って入れて」
そしてというのだ。
「蜂蜜を入れた醍醐と共に混ぜました」
「この器は」
近衛はこの器についても問うた。
「妙に刺々しいでおじゃるが」
「はい、これも鳳梨です」
「それの皮でおじゃるか」
「西瓜の様にと思いまして」
西瓜の皮である。
「こうしました」
「成程、そうしたものでおじゃるか」
「名前はまだありませぬが」
「ふむ、美味そうじゃな」
ここでこう言ったのは信長である、無論彼にもその膳が用意されている。
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