第百八十話 天下の宴その七
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「実はそう思っておりまする」
「やはりそうか」
「それがし達だけが食しても」
「これだけのものを口に出来るまでになるとは思っていませんでした」
秀長も言ってきた。
「ですが」
「母上にも」
羽柴はしみじみとして述べた。
「馳走を食わしてやりたいですな」
「これだけのものは無理でも」
「やはり見事じゃ、そこまでの孝行はな」
また言う前田だった。
「出来ることではないわ」
「だからですか」
「何処までも孝行がしたいか」
「母上ですから」
多くの理由はなかったただそれだけだった。
「出来るだけ楽しい暮らしをさせてやりたいです」
「そうか、ではな」
「母上にはです」
今まで以上にというのだ。
「幸せに暮らしてもらいたいです」
「ではこれからもじゃな」
「そう思っておりまする」
母の為に励むとだ、羽柴は前田に答えた。
「ねねもそれだけ楽が出来まするしな」
「そこで出るのじゃな」
ねねの名がだとだ、笑って言う前田だった。
「やはり御主はねね殿じゃな」
「ううむ、そうなりますか」
「ではこれからも大事にせよ」
前田は笑って羽柴に話した。
「わしもおまつをだし時にするからのう」
「おお、そういえば御主もじゃな」
「そうじゃったな」
佐々と金森は今度は前田に言った、しかも笑顔で。
「おまつ殿に惚れておるな」
「今も」
「うむ、わしには過ぎた女房じゃ」
前田は自分からこう言った、ここが羽柴と違うところだろうか。
「実にな」
「だからじゃな」
「これからも」
「うむ、楽しく暮らしていくぞ」
夫婦で、というのだ。
「大きくなってのう」
「今以上の大身になるか」
「それを目指すか」
「そのつもりじゃ。しかしこの馳走は」
鶴やすっぽんもある、そうした食材をふんだんに使った見事な馳走をだ。もう膳は五つ目になっている。どの食器も漆が素晴らしい。
「凄いのう」
「そろそろ終わりじゃ」
ここでこう言ってきたのは荒木だった。
「この膳でな」
「そして後は」
細川も言う。
「菓子になります」
「菓子とな」
「最後は」
「はい、それになります」
こう同僚達に話すのだった。
「最後は」
「では茶菓子が出るのか」
こう言ったのは川尻だった。
「最後は」
「ははは、それも出ますが」
「他にもか」
「それもお楽しみ下さい」
最後の菓子に何が出るのかというのだ。
「是非」
「わかった、それではな」
川尻は細川のその言葉に静かに頷いた、そしてだった。
今は待つのだった、最後の膳の馳走を食べながら。
そうしてその菓子の膳が出た、その頃には酒も終わっていた。
出て来たのはだ、茶菓子の上品な饅頭にだった。
「?何じゃこれは」
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