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美しき異形達
第二十四話 麗しき和服その一
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                      美しき異形達
                第二十四話  麗しき和服
 桜は自宅でだ、和風の畳の部屋においてだった。
 家族で大きな黒い木のちゃぶ台を囲んでそれぞれ座布団の上に正座をして座って夕食を食べていた、桜と彼女より年下と思われる女の子二人、どちらも桜には似ていないが落ち着いて優しい雰囲気の彼女達も桜もふわりとした丈の長いスカートの洋服だ。しかし年配の四人はというと。
 皆和服だ、その和服を着ている白髪の老人、その四人の大人の中で最も年齢が上と思われる彼がだ。胡瓜と若布の酢のものを食べつつ桜に問うてきた。
「桜、明日だが」
「はい、茶道のお稽古ですね」
「そちらはどうだ」
「楽しくさせて頂いています」
 微笑んでだ、桜は老人に答えた。
「茶道をしていると心が落ち着きますね」
「それはいいことだ。近頃御前は華道は日舞でも評判がいいな」
「いえ、どちらも」
 その華道や日舞はとだ、桜は彼に申し訳ない顔で答えた。
「まだまだです」
「至らないというのだな」
「修行が足りないと常に感じています」
 そうだというのだ。
「私なぞは」
「ふむ、そう思うのはいいことだ」
「よいことですか」
「修行が足りないと思うからこそだ」
 だからこそ、というのだ。
「人は余計に修行を積むからな」
「だからですか」
「そうだ、桜が正しい」
 その至らないと思っていることがというのだ。
「ではどれもな」
「これからもですね」
「励むことだ、そして」
「免許皆伝に至ってもですね」
「道はそれで終わりではない」
 茶道も華道も日舞もだというのだ。
「どれも道は果てしない」
「終わりのないものですね」
「そうだ、だからこそだ」
「例え免許皆伝になろうとも奢らず」
「励み続けるのだ、いいな」
「わかりました、お祖父様」
 丁寧な口調でだ、桜は老人に答えた。
「それでは」
「ただ。桜さんは」
 ここで気品のある姿勢で背筋を伸ばして食べている白い髪を丁寧にまとめている老婆がだ、桜に心配そうに言った。
「少し励み過ぎます」
「私もそれが心配です」
 赤と白の和服の妙齢の美女が老婆に応えてきいた、黒髪には若さが残っていて顔立ちも和風の整ったものだ。
「桜さんは努力家ですが」
「あまり努力が過ぎますと」
 老婆はその美女にも言った。
「疲れが溜まります」
「ですから」
「そうです、人は休むことも必要です」
 こう桜に言うのだった。
「そして遊ぶことも」
「遊び、ですか」
「遊んでもいますか」
 老婆は桜の顔を見て彼女に問うた。
「そちらは」
「はい、お友達と」
「ならいいのですが」
「遊びも必要なのですね」
「遊びといっても色々です」
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