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ドリトル先生と伊予のカワウソ
第十二幕その八

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「気にしないでね」
「有り難うございます」
「それにしても。思わない結果になったね」
 先生はしみじみとして言いました。
「日本にカワウソが戻って来てくれたんだね」
「戻って来たっていうか」
 トミーが先生にお話します。
「いたんですね」
「ははは、そうなるのかな」
「そうですよ、これだと若しかして」
「若しかして?」
「ニホンオオカミもまだいるかも知れないですね」
 この動物もだというのです。
「ひょっとしたらですけれど」
「そういえばそんなお話もあるよね」 
 王子もニホンオオカミのことを聞いて言います。
「まだいるんじゃないかって」
「うん、何処だったかな」
「奈良県の奥だね」
 先生が二人に言ってきました、トミーだけでなく王子にも。
「そこにまだいるんじゃないかって言われているね」
「奈良県ですか」
「そう、あの県にね」
「奈良県っていうとあの物凄く大きな仏像のある」
「東大寺の」
「はい、あの県ですよね」
「あの仏像だけじゃないよ」
 奈良の大仏だけではありません、奈良県にあるものは。
「他にも沢山の有名なお寺や神社があるんだよ」
「日本の宗教施設がですね」
「それが奈良県だよ、その奥のね」
「南の方にですね」
「うん、ニホンオオカミがまだいるんじゃないかっていうね」
「本当にいたらいいですね」
「そうだね、僕はいて欲しいと思っているよ」
 にこりと笑ってです、先生はトミーに答えました。
「本当にね」
「そうですよね」
「いたらね」
 それならというのです。
「カワウソさん達みたいに大騒ぎになるね」
「いい大騒ぎにですね」
「なるよ、けれど本当にね」
「カワウソさん達はですね」
「よかったよ」
 いてくれて、というのです。先生にしてみれば移住してくれてです。
「誰にとってもね」
「ですよね、日本の人達もほっとしてますよね」
「いなくなった人がいてくれてるとわかったらね」
「やっぱり嬉しいですよね」
「誰でもね」
「そうですよね、じゃあ先生」
 トミーはお茶、玄米茶を入れて先生に言いました。
「お酒じゃないですけれど」
「乾杯だね」
「そうしますか?」
「いいね」
 先生はトミーのその申し出に笑顔で応えました。
「それじゃあ今からね」
「お茶で乾杯しましょう」
 こうして三人で、でした。カワウソさん達のことでお茶で乾杯しました。先生は日本に思わぬ贈りものをしましたがそのことについては内緒にして笑顔のままでいるのでした。


ドリトル先生と伊予のカワウソ   完


                               2014・5・14
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