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た息を大きく吐き出し、両目をぎゅっと瞑ると、長時間の単独戦闘による疲労のせいかこめかみの奥が鈍く痛んだ。何度か大きく頭を振り、痛みを追い出してから、再び瞼を開ける。
視界右下に小さく光る時刻表示は、すでに午後三時を回っていた。そろそろ迷宮を出ないと、暗くなる前に街まで戻れない。
「……帰るか」
誰が聞いてる訳でもないがぽつりと呟き、俺はゆっくり立ち上がった。
一日分の《攻略》の終わり。今日もどうにか死神の腕をすり抜けて生き残った。しかしねぐらに戻り、短い休息を取れば、すぐにまた明日の戦いが訪れる。いかに安全マージンを取っていると言っても、勝利率が百パーセントではない戦闘を無限回続ければ、いつかは運命の女神に裏切られる時が来るはずだ。
問題は、俺がスペードのエースを引き当てる前に、この世界が《クリア》されるか否かーーということだ。
生還を最優先と考えるのなら、安全圏である街から一歩も出ず、ひたすら誰かがクリアしてくれる日を待つ方がずっと利口だ。しかしそうせず、毎日最前線に単独で潜り続け、死の危険と引き換えにステータスの強化を続ける俺は、VRMMORPG(仮想大規模オンラインゲーム)に骨の髄まで取りつかれた中毒者なのか、あるいはーー
不遜にも、己の刀で世界を解放しようなどと考えている大馬鹿野郎か。
かすかな自嘲の笑みを口の端に刻み、迷宮区の出口を目指して歩き始めながら、俺はふとあの日のことを思い出していた。
二年前。
全てが終わり、そして始まった、あの瞬間を。
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