3部分:第三章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第三章
「それ見つけたんだけれど」
「あっ、バローロを?」
バローロと聞いて正好も思わず声をあげた。
「それがあったんだ」
「そうよ、しかも安くて」
おまけに安いという好条件まで重なったのだった。
「四本買えたわ。一人当たり二本ね」
「凄いね。じゃあ今日はバローロでパーティーだね」
「けれど。パスタが」
しかしここで希はまた残念な声を出すのだった。
「それがないから。肝心のパスタが」
「ううん、それはいいよ」
正好は声を笑わせて話した。
「それはね。気にしなくていいよ」
「あれっ、そういえば」
ここで希は部屋の中の匂いに気付いたのだった。その匂いに。
「この匂い。大蒜にオリーブに」
「そうだよい。ネーロのソースはもうできてるよ」
笑った声のまま彼女に述べた。
「そして後はパスタを茹でるだけだね」
「パスタって。それはもう」
「やっぱりあれだよね。ワインがいいのを手に入れてそれに気を取られてパスタ買うの忘れたんだよね」
「ええ、そうよ」
希はその理由も今彼に話した。話しながらとりあえず自分の部屋に向かう。ワインはテーブルの上に置いておきそのうえで部屋の中で着替えるのだった。その自分の部屋から彼に応えるのだった。
「だから。それは」
「僕も同じだったんだ」
正好はここでまた声を笑わせた。
「いいパスタやソースの材料は手に入れたけれどそれに浮かれてワインを買い忘れて」
「それでだったの」
「正直それでどうしようかって思ってたんだ」
彼もまた自分のことを素直に話すのだった。
「けれどね。君がワイン買ってきてくれて」
「それで助かったのね」
「そういうこと、いや一時はどうしようかって思ったよ」
このことも話した。
「こっちもね」
「ワインを忘れたからね」
「うん。やっぱりワインがないと」
彼はやはりこのことを気にかけているのだった。
「どうしようもないからね、本当に」
「そうよね。私もね」
結局のところ彼女は同じなのだった。
「ワインはあってもパスタがないと」
「そうだよね。けれど本当によかったよ」
正好の顔は心から笑っているものになっていた。
「希ちゃんがワイン買ってきてくれていて」
「私もよ。正好君がパスタ買ってきてくれてたから」
言いながら部屋から出て来ていた。ラフにジャージをはいて上着もパーカーになっている。本当に楽に動ける格好になっているのだった。
「おかげで。ほっとしてるのよ」
「あれかな。やっぱり」
ここでそのフェットチーネを鍋の中に入れてそのうえで話す。
「お互い好きだからな」
「好きだからなの?」
「そうだよ。お互い好きだから」
にこりと笑って話す正好だった。
「だからこうやって揃ったんだよ」
「パス
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ