暁 〜小説投稿サイト〜
Shangri-La...
第一部 学園都市篇
断章 アカシャ年代記《Akashick-record》
??.----・error:『Nyarlathotep』V
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
──燃え盛る。深紅の瞳、世界を()め尽くすかのように。燃え盛る。深紅の舌、世界を舐め尽くすように。
 燃え盛る。漆黒の鎧、自身を覆い護って。燃え盛る。漆黒の刃、自身を傷付け護って。

「…………?」

 気が付けば、何時の間にやら。息苦しい程の熱気に黒煙、物の焼ける嫌な臭い。油の燃える甘い香り、立ち並ぶ、ジリジリと音を立てる行灯の芯。薄い明かりに照らされた、和風な造りの室内。畳張りに豪奢な柄の襖に区切られた……随分と古めかしい作りの、しかし真新しい洋風の調度品の数々。
 目の前、彼方の距離で。飾るように置かれた……和風とも洋風とも判別のつかない甲冑。暗闇を溶かしたように禍々しい爬虫類の翅のような黒羅紗の陣羽織に、毒牙や毒爪、或いは魂を籠めて鍛錬()たれた『(ツルギ)』の鋭さを思わせる、侍の鎧兜。腕を組み、仁王立ちするその全身の隙間から覗く、燃え盛る憤怒を灯した無数の蛇じみた赫瞳。

 余りに雑な和洋折衷(アシンメトリー)に、一瞬感じた不快感。焔と油、乱雑な檻は、何か嫌な記憶を。

『■■■……』

 腕の中に、忘れ得ぬ絶望の冷たさと軽さが甦る、そんな幻を思う。
 有り得ない、もう二度と無い。忘れたままでいたい、無力の記憶を揺らして。

「さて────」

 声、意外な程に高い。まるで鈴を鳴らしたような、そんな声が背後から。刹那、周囲の空気が凍り付いたかのように張り詰めて。
 緊張に、喉が渇く。熱気を吸い込んだ時よりも、更に更に。

「さて。さて────親愛なる(わらわ)憑代(よりしろ)(きみ)よ、人の子よ。こうして話すのは、初めてかのう?」
「…………」

 憎々しげに、嘲笑うように。振り返った視線の先で────一段高くなった上座、刀掛けに一振りの紅い鞘に拵えの太刀と黒塗りの火縄銃の掛かったそこで肘掛けにしどけなく横たわる……絢爛たる娘。墨を流したように美しい黒髪を結い、螺鈿細工を施した(かんざし)を差した。血の色よりなお深い、蛇じみた鋭さと無慈悲さを映す()の瞳の。
 喪服のような、しかし紅色の錦糸で多数の彼岸花の柄をあしらわれた豪奢な振袖の上に、男物の黒い外套を肩に羽織った姿の。奇矯な、実に奇矯な娘だ。

「そう畏まるでない、多少興味があるだけぞ。ほれ、もそっと近う寄れ。そうさの、貴様が()()()()『第六魔王』を否定した為に、漸く(わらわ)が出てこられたのじゃからな。褒めて遣わす、小童(こわっぱ)。何か褒美をやらんとな……ほれ、金平糖(こんぺいとう)じゃ。正真正銘の舶来じゃぞ?」

 足下、洋風の平たく大きい杯に目一杯積まれた、文字通り金平糖の山。それを、裾を割りながら伸びた白い足が。器用にも足の指で掴み上げると、ずいと押し
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ