彼と女と唐突と
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海童は夢を見ていた・・・真っ暗な空間の中に、彼一人だけ立っており、意識はそれなりにハッキリしているという、何とも奇妙な夢だ。
しかしこれと同じ夢を、海童は今まで何度となく見てきていた。
「また・・・あの素っ裸の大男か」
入学式前日から当日に掛けてに見た、あの此方の言葉には何も答えない大男の夢。海童は幾度となく体験してきたからか、ひどく落ち着いている。
今までと同じように言いたい事だけ言って去り、目の前が光で塗りつぶされて目が覚める・・・そう思い突っ立っていた海童。
・・・しかし、声は前からではなく、思わぬところから掛かってきた。
『オイ鼻っ垂れ、何処見てやがる』
「・・・?」
今までの大男とは違う声が、頭上から聞こえてきたのだ。姿は見えないのに声が聞こえ、しかも何故だか聞き覚えがある。
『ったく・・・顔上げて見やがれ』
「上・・・なっ!」
居た、と言うよりはあった。
シルエットはハッキリ見えるが、顔のつくり等はぼやけている、身長も体の幅も大き“過ぎる”髭を蓄えた男が。
男は海童が自分の方を向いた事を確認すると、何が可笑しかったか特徴的な笑い声で笑い出した。
『グラララララ・・・やっと気ぃついたかよ、若造』
「この声・・・あんた、入学式の・・・!?」
『さて、気が付いたんなら時間も少ねぇし、伝えたい事を言っちまうぜ』
男は恐らく薙刀であろう得物を立てると、苦笑しているのであろう声色で話しだした。
『まずは・・・お前、空中に向けて“力”撃った時、地震引き起こしちまったよな? ありゃ仕方ねぇよ、まだお前さんは細かいコントロールも使い分けも出来ねぇんだから。衝撃波と振動がごっちゃになる事もあらぁな』
「衝撃波と・・・振動?」
『これは追々覚えて行け。そんでだ、前も言った様にお前の力は鍛え研ぎ澄ましゃ応用法も見つかるし、俺も助言ぐらいはしてやるよ・・・早速、今回最初の助言を二つ・・・最初も含めりゃ三つだ』
「・・・それは?」
『一つ、拳だけが武器だと思わねぇ事だ。全身を砲口に見立てろ。二つ目は・・・長ぇ得物もったら、そいつを体の一部として力を試してみな、今のお前でも単調ながらすごい事が出来るぜ』
「・・・長い得物・・・か」
男に言われた事を頭の中で反芻していると、男がハッとなって少し下がり、残念そうに話す。
『おっと、ここまでみてぇだな・・・何時になるか分からねぇが、次を待って鍛えてな・・・あばよ! グララララララ!』
特徴的な笑いを再びかまし、大男は海童へ背を向けて去って行く。
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