彼と女と唐突と
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たならばそう思う所だが、何故か海童はちゃんとテーブルについてコーヒーを飲んでいるのに、肝心のケーキは目の前はおろか何処にも置いていない。
「オイシーですハルコ先輩! これって手作りですか?」
「うん、中々いい出来に仕上がったから、食べてもらおうと思ってね」
「料理だけでなくお菓子も作れちゃうなんて、凄いです! あむっ」
「まだあるから、落ち着いて食べてね?」
嬉しそうな顔でイナホがケーキを食べるのを、春恋は料理人冥利に尽きるといった表情で眺めている。
・・・が、海童の前には何時まで経ってもケーキなど来ず、本人すら何も言おうとしない。
不思議に思ったか、イナホが二つ目のケーキをもらいながら海童へ聞いた。
「海童様? 何故ケーキ食べないんですか? ハルコ先輩のケーキ、とっても美味しいんですよ!」
「いや俺は・・・」
言い辛そうにする海童の台詞を、春恋が苦笑いで引き継いだ。
「あのねイナホちゃん。カッちゃんさ、実は甘い物が大の苦手なのよ」
「ええっ!?」
「甘い物と言ってもフルーツなら、甘すぎなければ食べれるんだけど・・・」
「ケーキやアイスクリーム・・・饅頭とかもダメだ。食ったら・・・本気で気持ち悪くなる」
「ホント、ビックリするほど顔が真っ青になるからねぇ」
「しょうがないだろ・・・本気で嫌いなんだ」
甘い物を想像してしまったか慌てて空になったカップにコーヒーを入れて飲み干す海童を、イナホと春恋は不謹慎かなと思いながらも笑いを抑えきれずクスクスと漏らす。
淹れたコーヒーが少なくなり、イナホが五つ目のケーキに入った(春恋と海童が半ば呆れている)頃、ようやくコダマが返ってきて、席を立った海童の目の前に立つ。
「なんですか? 姫神先輩」
「ああ、明日は休日だからな。ワシと付き合ってもらう」
「は?」
「「え?」」
コダマから海童へ向けての発言の直後、リビングの空気が時を止めたが如く固まった。そのまま部屋へ足を進めようとしたコダマだが、イナホの傍にあるケーキを見て歩みを止め、春恋の方へ向き直る。
「ケーキはまだあるかの?」
「れ、冷蔵庫に・・・」
「うむ、いたたくぞハルコ」
「ど、どうぞ・・・」
カチコチな空気など気にもせず、コダマは冷蔵庫へケーキを取りに行くのだった。
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翌日の九時過ぎ。
「・・・」
付き合え発言の真意は“買い物に付き合え”と言う意味であった様で、海童は指定された場所でコダマを待っていた。
同室なのに何故待ち合わせをしてい
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