第6章 流されて異界
第101話 深淵をのぞく者は……
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います。
そして、俺や長門さん。さつきに万結。それに朝倉さんも多分、ハルヒたちが立つ位置よりは少し……闇に近い部分に立って居るのでしょう。
通常の理が支配する近代国家と、迷信と魔法が支配する神話の世界。その危険な狭間でただひたすら輪舞を舞い続けて居るのが俺たち。その結末が果たしてシェークスピア的な色に染め上げられるか、それとももっと幸福な色で終わりを迎えるのかは、今の所、誰も知らない未来の話。
「ハルヒが不思議を求めて、その深い闇の奥を覗こうとする事は誰にも止める権利はない」
危険やからヤメロ、と言う事は可能やけどな。
そう実際の言葉以外の方法。壁に反射する余韻と瞳のみで言葉を締め括り、ひとつ息を吐き出す。
それでも、
「ハルヒが闇の奥を覗く事が出来るように、闇の奥に潜む何モノかが此方側を覗く事も出来る……と言う事は理解して置いて欲しいな」
一度はその闇の奥から顕われた邪神と、彼女は接触した経緯があるのですから。
消えて終った向こう側の世界の歴史では……。
伝えたい内容を話し終え、机の上に残された湯呑に手を遣る。其処には先ほど飲み残したお茶がすっかり冷めた状態で俺の帰りを待ちわびていた。
「あ、もう一度、淹れ直しましょうか?」
ふん。何よ、エラそうに。忍のクセに生意気よ。……と言う小さな呟きに重なる朝比奈さんの問い掛け。
何と言うか、何故か正面からは名前を呼ぼうとしない彼女、なのですが、こんなどうでも良い憎まれ口を叩く時だけ名前を呼ぶって……。
「いや、冷めたお茶の方が飲みやすいから無理に淹れ直す必要はありませんよ」
如何にも彼女らしい呟きの方は完全に無視をして、朝比奈さんの問い掛けの方にだけ答えを返す俺。
流石に完全に酸化し、元々の色からその呼び名に相応しい茶色に変化したお茶が美味い訳はないのですが、それでも残り物には福がある、と言う言葉を信じて一気に飲み干す俺。
多分、冷めきって酸化したお茶に残って居る成分はカフェイン程度だと思いますが……。
「まぁ、良いわ」
少なくとも俺が揶揄している訳でもなければ、彼女の目的、趣味を茶化している訳でもない。更に、至極真面目に彼女を心配して居る事が伝わったのか、不機嫌ながらもそう答えるハルヒ。
しかし、更に続けて、
「それなら、その筋の専門家のあんたに聞きたい事が有るんだけどいい?」
そう問い掛けて来る彼女。ただ、ほんの少し漂って来る陰の気。これは何かに落胆した時に人が発する陰の気。
彼女が何に落胆したのか意味不――
少しずれる思考。ただ、ひとつの仮説は立つ。しかし、今は彼女の問いに答える方が先ですか。
もっとも、専門家と呼ばれるほど世界の裏側に精通している訳でもなけれ
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