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第一章
ふと思い立つと
矢車正好はパスタが大好物である。それに赤ワインがあればなおよい。この二つの組み合わせさえあれば何も文句はない男だった。
その彼の恋人である長田希もまた同じであった。彼女もパスタと赤ワインが大好きで飲む時は大抵この組み合わせだった。家でも外でもそれは同じだった。
勿論二人共そのことはよく知っていてお互いの家の中でもデートでもパスタに赤ワインだった。このことは周りにもよく知られていた。この日も会社の帰りの時に周りからからかい半分で声をかけられて言われるのだった。
「デートか?今から」
「ああ、そうだ」
穏やかな顔で同僚達の言葉に応えるのだった。
「で、今日もデートの帰りあれだろ」
「イタリアンレストランだよな」
「ああ、そうだよ」
正好は笑って答える。黙っていれば背は結構高くすらりとしていてモデルのようである。目は少し鋭いが引き締まっていて頬が適度に痩せたいい顔をしている。額が少し気になるのか髪を上から下ろしている。
「今日もな。何を食べようかな」
「何ってパスタじゃないか」
「それで何を食べるっていうんだよ」
「パスタっていっても種類があるだろ?」
しかし彼はここでこう言うのだった。
「何種類もな。違うか?」
「スペゲティにマカロニにペンネにフェットチーネ」
同僚の一人が述べた。
「そういえば結構あるよな」
「種類もな」
「それにソースもな」
正好の言葉は続く。
「色々あるだろ?ミートソースとかだけじゃなくてな」
「だよな。トマト使う野茂あればボンゴレもあるしな」
「シーフード、いいよな」
皆それぞれパスタのソースについても話をはじめた。
「あとイカ墨な」
「ああ、あれいいよな。美味いの何のって」
「俺ペンネアラビアータがいいな」
「だからだよ。ワインだって何種類もあるんだ」
正好はワインについても語るのだった。
「それこそ一生かかっても食べきれないだけあるさ。だからパスタとワインには飽きないんだよ」
「希ちゃんもだよな」
彼女の名前も皆知っていた。それだけ公になっている付き合いなのだ。
「あの娘もやっぱりパスタが好きなんだよな」
「そうさ」
また笑ってその皆の言葉に答える正好だった。
「当たり前だろ、それって」
「当たり前とは思わないけれどな」
「まあそれでも。あの娘もパスタ好きなんだな」
「それとワインもな」
やはりプラスアルファだった。
「お互い好きなんだよ。だからいいんだよ」
「何か完全に似た者同士なんだな」
皆その話を聞いて思った。
「パスタにワイン好き同士で」
「そうなんだよな。パスタもワインも美味いし」
正好の言葉はそれに留まらなかった。さらに言うのだっ
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