御前が嫌いだ
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うとしない。俯いたまま話す。
「あたし決めてたの。初めては裕二にって」
「何で僕なんだ?」
「そ、それは・・・・・・・・・」
それ以上は言わなかった。否、言えなかった。
「え、それって・・・・・・」
千里は黙ってこくん、と頷いた。
「そんな、嘘だろ」
嘘ではなかった。千里の沈黙がそれを教えていた。
「じゃあ今まで僕に意地悪したり喧嘩を仕掛けてきたのは・・・・・・」
この時になり裕二はようやく千里の真意を悟った。
「そうだったのか、それで」
千里は俯いたまま何も言おうとしない。そんな姿がかえって愛おしく思えた。
(こいつこんなに可愛かったんだ)
そっと近寄る。そしてその小さい肩を抱いた。
「中村・・・・・・・・・」
名だけ呼んだ。そして抱き締めた。
「裕二・・・・・・・・・」
肩を抱くその手に自分の手を重ね合わせた。もうそれだけで充分だった。
それから裕二と千里は付き合うようになった。それを見た多くの人はそれに驚いたが中には微笑む人もいた。
家が近くである事もあり二人の交際は急激に親密なものとなっていった。
「どうして二人が付き合うようになったか?」
学校の者、とりわけ二人と同じクラスの者や水泳部の者はそれについてよく議論した。しかしどうしてなのかは結局誰も知らなかったし誰にもわからなかった。
ただ当の二人だけは知っていたしわかっていた。そして二人だけでよかった。
何故なら恋とは本来そうしたものなのだから。
御前が嫌いだ 完
2003・11・13
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