御前が嫌いだ
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。
ゴールした。優勝だった。到着を知らせる笛の音が鳴る。
「やったぁーーーーっ!」
部員達が喚声をあげる。ゴールした千里もプールの中で思わずガッツポーズを取る。
タイムは予想通りかなり速かった。それまでの彼女の記録をかなり更新していた。文句無しの優勝であった。
成績発表の後千里は身体を拭きジャージに着替え観客席に戻ってきた。喜びに満ちた清々しい笑顔だ。
「どう、やったわよ」
荷物を取りに行こうとする裕二に声を掛ける。
「おめでとう」
普通に言葉を返す。嫌いな相手だからといって意地悪をするつもりは無い。
「・・・・・・ん〜と」
千里はきょろきょろと辺りを見回した。そして周りに知っている者が誰もいない事を確かめると裕二に言った。
「約束、憶えてるわよね」
裕二に顔を近付けて言った。
「え?ああ、うん。何でも言う事聞くってやつね」
裕二もそれはしっかりと憶えていた。
「じゃあちゃんと守ってくれるわよね、約束」
「勿論。そんな事はしないよ」
その言葉を聞いた千里の唇の両端が僅かに綻んだ。
「よろしい。じゃあ明日の放課後体育館まで来て」
「体育館?何するんだよ」
裕二は少しいぶかしんだ。
「あたしの言う事何でも聞くんでしょ。つべこべ言わない」
つん、と裕二を見上げて言った。
「・・・わかったよ。放課後、体育館ね」
「よろしい。待ってるからね」
千里はそう言い終えると踵を返して皆の方へ戻っていった。後には裕二だけ取り残された。
「・・・・・・一体何をするつもりなんだ」
裕二はぽつりと呟いた。
翌日の放課後裕二は体育館に来た。いつもはバスケ部やバレーボール部が練習しているのだが今日は近くの市民体育館へ練習に行っていていない。今日は水泳部も練習は休みだ。
「だからってわざわざこんなところで。僕の家かあいつの家じゃ駄目なのか?」
まだわからない。どうしてこんなところに、と思っている。
「来たわね。ひょっとしたら来ないかも、って思ったわよ」
横から千里が来た。セーラー服である。
「ここで何させるつもりだよ。走れ、とかそういう罰ゲームならグラウンドでも出来るだろ」
「違うわよ」
千里はにこりと笑った。
「・・・じゃあ何なんだよ」
「こっち来て」
そう言うと裕二を倉庫の中まで連れて行った。
ガチャン
扉を閉めた。そして中から鍵をかけた。
「・・・これでいいわ」
そう言うと微笑んだ。この時裕二は気付かなかったが僅かに妖艶さが漂う笑みだった。しかしまだ子供を卒業したばかりの彼はこの笑みを感じ取る事は出来なかった。また千里もそれを漂わ
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