≪アインクラッド篇≫
プロローグ リセットの享受
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な真紅のローブと、同じく巨大な白手袋が浮いていた。
は?とまた思った。状況が掴めない。さっきから一度も掴めてない。
段々と不安が積もっていき、大きくなる。なんの証拠も無い嫌な予感と無意識の推測が、俺を無自覚に怯えさせた。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』
茅場晶彦、というとこのゲームの開発者だ。知っているのは名前だけじゃない。インタビュー動画も見たことがある。
今、アナウンスで流れてくるこの声は金属質そのものだが、言われてみればどことなく茅場晶彦の語幹を感じる。
不安は積もる。
「……唯一、コントロール?」
声が自然に小さく呟くように出た。しかしその疑問符のついた独り言には、当然、茅場晶彦は答えてくれない。
『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消失していることに気づいていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、≪ソードアート・オンライン≫本来の仕様である』
不具合ではなく、仕様、だと茅場晶彦は言っている。仕様、ということは別にログアウト方法があるという解釈もできなくはない。
となると、ログアウトを使ったバグ技や反則技が見つかり運営はそれに対する対処としてログアウトボタン消失させたという可能性もある。
そんなささやかな抵抗も、茅場晶彦は許してくれなかった。
『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない』
―――自発的にログアウトはできない?
替わりに、不確定だった架空の不安を、具現化させた。
俺は今、架空でも現実でもない、ゲームでもリアルでもない立場へ無理矢理に立たされているのだと。そう実感した。
『……また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みた場合 ――――』
『――――ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる』
言葉の意味を飲み込んだ瞬間、ぐらり、と意識が揺らいだ。外部の人間の手。マイクロウェーブ。脳の破壊。生命活動の停止。
先程まで俺、キリト、クラインの三人が望んでいた外部からのログアウト方法は、人生からのログアウト方法だったというわけだ。
そして、ここにいる一万人のほとんどが、親しい者の悪意なき手により死ぬ可能性があるということだ。それは、俺も――――。
しかし、いや、俺には、部屋の鍵がある。俺の両親が数時間やそこらで突破できるものじゃない。そう、俺は安全だ。今だって、まだ生きている。
外部の手によって、俺が殺されることは無いはずだ。まだ、ない筈なんだ。
俺は自我を取り戻す。今は死なない、
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