≪アインクラッド篇≫
プロローグ リセットの享受
プロローグ 郷愁の日々 その参
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広大な石畳。周囲を囲む街路樹と、瀟洒な中世風の街並み。そして正面遠くに黒光りする巨大な宮殿。
それはまさしく先程まで遠目で見ていた≪始まりの街≫、その中央広場だった。
俺が呆気にとられてポカンと口を開けていると、周囲に青白い光の柱が出現する。俺はこの時、やっとこれが≪転移≫によるものだと分かった。
次々と転移で送られてくるプレイヤー達は中々に個性的で、中には俺の様にネタアバターもいくつかあった。
数秒後、中央広場の爆発的な人口増加は止まった。恐らくはプレイ中の人は全員揃っているのだろう。一万人近くは居るだろうか。
増加が終わり数秒は静かだったが、ざわざわ、ざわざわと段々にプレイヤー達の話し声や罵声が大きくなっていく。「どうなってるの?」「これでログアウトできるの?」「早くしてくれよ」など思い思いの言葉を呟く。
時間の経過と供に、言葉の群れは苛立ちを帯び始め、「ふざけんな」「GMでてこい」といった罵声の割合が増えていく。
周囲にキリトやクラインの姿は見当たらなかった。一万人も個性的な面々が居れば、格好良くてもどちらかといえば目立たないほうのアバターになる二人を見つけるのは困難、いやはっきりいうと無理だろう。俺は合流をすぐに諦めた。
「一体全体、なんが起こってんだか……」
これは、まぁ間違いなく、今回のログアウトバグへの対処の一環だろう。このあと謝罪のアナウンスが流れて強制ログアウト、後日お詫びの品が届く、といった一般的な対処の一環。
しかし、どこか不安が拭えない。今立っている場所が何処なのかわからない、といった不安。俺は今、何処に居るのだろう、という不安。
俺は今、間違いなく始まりの街の中央広場に居る。それは分かる。でも今は――数分後は違うのだろうが――現実と完全に遮断されている。
そうか、いま俺は、ログアウトを巡って、現実と架空の狭間にいるのか、だからこんなに不安なのか。
ナーヴギアは、現実と架空を完全に遮断する。だからこんなに不安なんだ。
自分の感じている不安を整理し、すぐに強い気持ちを取り戻す。なんてことはない。この後けったいなアナウンスを聞いて、立場不定というこの不安は完璧に拭え去るのだから。そうして明日を丸々一日をゲームに費やす。むしろその頃に届くお詫びアイテムが楽しみだ。
物思いに耽っていた俺は外部のざわめきを無視し、群集の靴を眺めていた。こんなざわめきを聞いていても無駄だし、極論アナウンスを聞かなくてもいい。
だからその言葉が聞こえたのは、ざわめきや一般的なアナウンスとは比べ物にならない大音量で特異な内容を含んでいたからだ。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
は?と音になっていない声を上げ顔を上げる。そこには巨大で不気味
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