そして、彼女は
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少女は孤独だった。
5歳の時、少女は全てを失った。
傷だらけの体を無理矢理に起こし周りを見ると、見慣れた街並みは無残なまでに崩れていた。投げ出されるように転がる人々は、見ただけで死んでいるのだとはっきりと解る。
ああ、孤独なんだ、とその時少女は冷めたように思ったのを覚えている。そうなるのが解っていたかのように、泣く事も怒る事もせず、ただ淡々と自分がこれから周りにどう見られていくかだけを考えていた。
それが、たった5歳の少女が無意識に生み出した、現実から目を背ける方法であった事を、この時の少女は知らない。
それから、少女は魔法を覚えた。
いつかあんな魔導士になりたい――――そう願った背中に追いつく為に、その手からあらゆる物を自由に生み出す、自由の魔法を習得した。
そして、少女は知る。
憧れの魔導士が、弟子を取ったという噂話。一夜にして滅んだ少女の故郷からそう遠くない距離にある街に、彼女とその弟子2人がいると。
――――――私も、あの人の弟子になりたい。
――――――あの人のように強く、美しい造形が出来るようになりたい。
その一心で、少女はその街へと向かった。
結果、少女はまた全てを失った。
さくさくと雪を踏みしめてやっと辿り着いた場所に、彼女はいなかった。更に情報を集め向かった先では、氷に包まれた厄災の悪魔――――――少女から全てを奪った、どれだけ憎んでも足りない程に憎い存在だけがいた。
――――――どうして?
震えながら近づき、氷に触れる。冷たいはずのそれはどこか温かく、少女はそれが人であった事を知った。
――――――何で、何で私の願いは叶わない?
絶望の中で必死に答えを見つけようと足掻く。
そんな時、少女は1人の少年と出会った。乱暴に服の袖で涙を拭う少年は、少女に気づいていないのか、その横を過ぎ去る。
――――――ウルはアイツの…グレイのせいで……!
少女は、少年の姿を覚えていない。
ただ、この聞こえるか聞こえないかの呟きは、はっきりと聞こえた。その瞬間、少女の中をぐるぐると駆け巡っていた憎悪が1つに集まる。
ふらりと何かに取り憑かれたかのように歩き出した少女は、見つけた。
涙を流す、黒髪の少年を。
――――――あれが、グレイ。
何の根拠もなかった。
それでも、少女はそうだと信じていた。彼女の弟子のうち1人は黒髪だという事は知っていたし、赤の他人なら、彼女に謝罪を繰り返しながら泣いたりしない。
血が滲むほどに唇を噛みしめ
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