そして、彼女は
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…ないよね?」
そう――――――ミラの不安はそれだった。
勿論その気になれば、術者であるミラは接収する悪魔を戻す事が出来る。が、それは相手が生粋の悪魔だった場合であり、元々が人間だったアルカにも当てはまるのか解らない。
もしそれで戻って来られなかったら。その時はミラだけじゃない、妖精の尻尾の全員がアルカを失ってしまう。
成功の確率なんて解らない。失敗の確率だけがぐんぐん上がっていく。
「……解んねえ。もしかしたら実際に会えるのはこれが最後かもしれないし、そうじゃないかもしれない。曖昧なんだよ、オレだって接収された事ないんだから」
その答えは正当だった。アルカに解る訳がない。
それでもミラは、「当たり前だろ、ちゃんと戻ってくる」と答えてほしいとどこかで願っていた。それがたとえ嘘だとしても、何の根拠もない言葉だったとしても、縋りたかった。
「けどさ」
無意識に俯くミラの顔を上げるように、アルカが声のトーンを上げた。
引っ張られるように顔を上げて、ミラは目を見開く。
そこにあったのは、清々しいまでの笑顔だった。ギルドで見慣れた、アルカの笑顔だった。
「方法があるのに失敗怖がって何もしないのって、オレすっげえ嫌いなんだ」
無邪気で明るくて、見ているこっちまで笑ってしまうような笑み。
つり気味の目がきゅっと細くなって、ニッと口角が上がって、全てを楽しもうとするような表情。どんな困難も絶望も痛みも楽しみに変えてしまう、そんな感じ。
「これがオレだけの事だったら即動いてるけど、今回はミラの力借りなきゃどうにも出来ない。だから、これだけ聞かせてくれ」
そう言って。
アルカはくるりと体もミラに向けて、目線を合わせるように前屈みになる。見上げていた顔が同じ高さにやってくる。
ミラの色素の薄い青い目を真っ直ぐに見つめたまま、アルカは問うた。
「これはオレのワガママだ。……どうしようもないワガママだけど、力貸してくれねえか?」
言って、アルカは前屈みを止めた。
そして、ポケットに突っ込んでいた右手を出し、ミラに差し伸べる。
反射的に顔を上げると、アルカは笑みを浮かべたままミラを見ていた。判断はお前の好きにしていい、と目が言っているような気がして、ミラは差し伸べられたアルカの手に目を落とす。
(ホントに、凄いワガママだよ)
失敗したらどうなるか、アルカだって考えているはずだ。
それなのにその可能性の全てを捨てて、どれくらいあるのか解らない成功の確率に賭けている。失敗すればミラを道連れにする事だって、きっと彼は解っている。
だからこそ、力を貸せとは言わなかった。最後の最後の判断をミラに任せている
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