そして、彼女は
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いた。
暫しの沈黙。それを破ったのは、パラゴーネ。
「……師匠は」
「何だ?」
「師匠は、私が述べなかった訳柄を述べれば…私を、敵だとは目視しないのか?」
質問の意味が解らなかった。彼女の複雑な言い回しが解らなかった訳ではなく、質問の意味が。
私が言わなかった理由を語れば敵だと見ないのか、とパラゴーネは問うた。
少し考えた結果、グレイは答える。
「ああ」
それはつまり、理由を教えてくれれば敵だとは見ないという答えであり。
それを聞いたパラゴーネは、誰にも見えないと知っていて微笑んだ。
「よかった」
「は?」
「師匠は私を、師匠の輪の中に入れてくれるのだな」
その声はどこか嬉しそうだった。
……嬉しそうなのに、寂しそうだった。
表情で言えば泣き笑いのような声が、更に紡ぐ。
「その訳柄が何であっても、結実がどうであろうと、それを解釈するのだな」
そう言って、パラゴーネはもう1歩後ろに下がった。
その両手が、ゆっくりと前に伸びる。
左手は開いて、右手は拳を作って、そして――――――左手の上に、右拳を乗せるその構え。
見覚えがある、では済まされない。
「造形魔法の構え!?」
「パラゴーネ!」
これはまさか、彼女はこちらをを攻撃しようとしているのでは?―――――咄嗟にその考えが浮かんだ。
ズゥン、と重そうな音を立てて造形された重力の剣を、パラゴーネは構える。
その行動に、咄嗟にナツは拳を握りしめ、ルーはルーシィを庇うように右腕を伸ばし、エルザは別空間から剣を呼び出した。
「何のつもりだ、パラゴーネ」
「訳柄を論説する、それだけだ」
淡々と呟くパラゴーネ。
彼女はナツ達の顔をゆっくりと見回すと、力なく微笑んだ。
「私が述べなかった訳柄は――――――私が最後の十二宮だからだ」
その言葉の意味を理解するのに、きっかり5秒を費やした。
そしてその5秒の間に、パラゴーネは次の行動を起こしていた。
パラゴーネは、握りしめる重力の剣の切っ先を。
ナツ達ではなく――――――自分に向けたのだ。
「!パラゴーネっ!」
「まさかっ……!」
気づいた時には、もう遅かった。
パラゴーネの決意と覚悟は堅く、もうどうしようもない所まで来ていた。
彼女が剣を造形した理由は、ナツ達を傷つける為ではない。人数で圧倒的に不利なこの状況でそんな行動を取るほどパラゴーネがバカではない事を、彼等は知らなかったのだ。
そして、パラゴーネは呟く。
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