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Element Magic Trinity
そして、彼女は
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、拳を痛いほど握りしめる。先ほどの少年の呟きが正しいのなら、少女から全てを奪ったのはあの少年だ。




――――――許さない。










7歳の時、少女はとあるギルドに加入した。
闇ギルドの最大勢力、バラム同盟の一角を担うそのギルドで、少女は己の魔法の腕を磨き続けた。憧れた背中はもうない。どれだけ手を伸ばしたって届かないそれを思い出す度に、あの憎き黒髪の少年に対する憎悪が強くなる。




それでも、少女の憎悪はゆっくりと薄れていた。
命を犠牲にしてでも弟子を守ろうとしたその志は、いつしか少女の目にはキラキラと輝いて見えた。




10歳の時、ギルドマスターである女性はとある秘術を少女に授けた。
一か所に集まる命を集め、蘇生させる禁断の魔法。魔法開発局にいた女性にとって、その程度の魔法を生み出すのは大した労働でもない。





――――――これを覚えれば、私の夢が叶う。






それだけを信じて、少女は秘術の習得に明け暮れた。









そして、15歳。
少女は、またしても全てを失った。


月明かり照らす島、ガルナ島。
戦いの跡が残る月の遺跡で、少女は呆然としていた。
氷に包まれた悪魔の姿はない。あるのは悪魔の残骸と、溶けて水になり、海に流れた彼女。
10年前のあの時のように意外にも冷静だった少女は、様々なルートを駆使して情報を漁り―――――知る。





――――――リオン・バスティア。






それが、最終的に少女が憎悪する相手の名だった。
とあるギルドに属し仲間と日常を過ごす彼と、すれ違った事がある。明るく笑う訳ではなかったけれど、どこか楽しげに口元を緩ませ、自分の名を呼ぶ仲間の方に歩いていった。





――――――駆逐する。





その思いが芽生えたのは、必然とも言えるだろう。
少女は何を得ても全てを失ったのに、彼は何かを得て、それを軸に様々な物を得た。少女のたった1つの願いを踏みにじったのに、日の光が当たる場所にいた。
それに対する嫉妬、怒り、嫌悪、そして憎悪。その全てが混ざった瞬間、少女は決意する。



あの男から全てを奪おうと。
そして、あの男の命も奪おうと。









(……ああ)

それから、少女は敗北した。
かつて憎んだ相手に、負けてしまった。少年だった彼は青年に成長し、かつて気づかなかったその魔法の強さに気づき、少女を撃破した。

(結局、私は何も得られなかった。失うのが当然でしか、なかったんだ)

青年を見る。
その背中は、かつて憧れた彼女に似ていた。実際に見た事は
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