大剣持ちし片腕が二人
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その笑みは、自分が親衛隊として当然の仕事をするだけだと言ってくれている。
――いつも通りに守る。それが仕事。季衣は此処に居ないけど、この身を掛けて守り通さなければならない人が……居るっ!
心の隅々まで燃え上がるは守りの信念。生まれ出でてから常に高めて来た自身の戦う意味。
「任せてくださいっ!」
愛らしい笑みを浮かべて響かせる声には歓喜の音色。
うんうんと頷く春蘭と共に、流琉は城壁の上から“下りて行く”。
のんびりと、ゆっくりと、ふわふわとした金髪をなびかせる少女が一人、すれ違う。
「時機は任せたぞ、風。行ってくる」
「行ってきます!」
「お任せあれー。くれぐれも怪我とかしないでねー」
日常時の話し言葉に気が抜ける。
無茶を言うなとは言わない。それが彼女の心配から来る回りくどい思いやりの言葉だと知っているから。
階段を下りればどちらも無言。ほどよい緊張感が胸に与える高揚が血を沸かす。
待たずともよい。彼女達の前の門は、開け放たれている。
吹き抜ける風が心地よく感じた。城壁の上で感じていた風向きから察するに、外に出れば追い風となるだろう。
にやり、と馬に飛び乗った春蘭は笑う。見える砂塵はまだ遠く、城に着くには遅すぎた。
「行くぞっ! 我らが主に勝利を捧げる為に! 私に……続けぇ――――――っ!」
街中に響くかと思える程の大声を合図に、春蘭率いる曹操軍は……突撃を開始した。
彼女達が思い描く戦の前哨戦である白馬の戦い。その戦端は、大剣の堂々たる一閃を以って幕を開けることとなった。
「春蘭ちゃんは突撃がお好きなようですが、突撃と言ってもやりようはイロイロあるのですよー」
城壁の上で一人ごちた風は、頬を撫でる涼風に心地よさげ。
見れば突出した騎馬部隊が五つ、群れを為して砂塵へと向かい行く。追随するは騎馬の倍を有する歩兵達、左前方にペパーミントグリーンの髪を揺らす少女が颯爽と率いていた。
碧の瞳には冷たい輝き。優しさも無く、思いやりも無く、盤上の駒を動かすが如く、冷徹に。
不意に見えた幾多の光。宙に煌くそれらは矢の反射光であった。追い風に流されてズレた射程では、望んだ被害は齎せない。
ふぅ……と小さく息を付いた後、口に咥えていた飴を宝ャに持たせ、くるりと身体を半回転。両の手を口元まで上げ、
「誰かー」
間の抜けた声で人を呼んだ。
そうして現れた兵士に指示を一つ、二つ。
走り去った背に手を振って、また城壁から戦場に向き直った。
「さて、団扇が必要にならなければいいですね。風も熱いのは苦手ですから」
†
物見の兵の報告では門が開け放たれたまま、とのこと。細作でも仕込もうと昨日
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