大剣持ちし片腕が二人
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千……どうしてこの数なんでしょうか?」
兵数である。
確かに延津にも同時進行してくるだろうと予測されていたが、もう少し数を送ってくれても良かったのではないかと考えてしまう。
「……じゃあ聞くが、流琉は五千以上の兵を指揮した事があるのか?」
「……あ」
気付いた。季衣と一緒に率いていた親衛隊は最大で五千。華琳の指揮の恩恵があっても、それ以上の数を率いた事は無い。
くしゃり、と頭を撫でられる。見上げた麗人の横顔は、ただ凛々しかった。
「経験を積め。まだこの乱世は続くぞ。五万の軍を私とお前で蹴散らすのだ。その事実は何よりの力となる」
「……はいっ」
ずっと秋蘭を見てきた。彼女のようになりたいと願って、追い縋ろうと積み上げてきた。
季衣を抑える自分なら、春蘭を抑える秋蘭と同じになれると思っていたから。
――なんて視野が狭かったんだろう。
違う。それでは、それだけではダメだった。
流琉は秋蘭では無い。だから、皆から学び、吸収し、伸びなければいけなかった。それを教えられた。
キラキラと光る眼差しを向けられて、恥ずかしそうにぽりぽりと頬を掻いた春蘭は前を見据える。
幾分、空気が変わる。何を以ってか、春蘭は口元を引き裂いた。
「くくっ」
砂塵はまだ遠く、速度はそれほど速くない。歩兵か、それとも騎馬の脚を休めているのか。
喉を鳴らしただけの笑みに、流琉はぶるりと寒気が起こった。獰猛な獅子。まさしくそれが居た。普段は愛らしい猫のような一面を見せる彼女が、これほどまでに凶悪な笑みを浮かべた所を、流琉は終ぞ見たことが無かった。
「優しいお前に楽しめとは言わん。それでも、この戦は楽しむモノだと言っておく」
ポン、と頭に手を置いた後、春蘭は颯爽と外から中へと脚を向ける。漂う圧力はその背を大きく見せ、無意識にゴクリと生唾を呑み込ませる程。
たたっ、と続いた先、城壁の中には人、人、人の群れ。蒼い鎧を纏いて居並ぶ、彼女の為の兵士達が其処にいる。
再び見上げれば彼女の笑みは消えていない。むしろより不敵に、より獰猛に彩りをいやに増していた。
「……待たせたな! 此処よりは我らの望んだ戦場だ! 敵五万に対するは一万と五千!
だが、それがどうした! 我が名は夏候元譲! 曹孟徳が片腕なり! 血を浴びようとも浴びせるな! 主に捧げた眼は既に勝利を見ているぞ!」
雄叫び、天を衝き、大地が震える。割れんばかりの歓声には信頼と尊敬を込めて。
見よ、我らが将は臆さず怯まず。我らはいつもの如く並び立つのみよ……と。
「流琉、左は任せた。私の左目は華琳様の元にある。だから、お前が私の左を守るのだ」
嗚呼、と心が震えた。その言葉は、悲哀を生むモノでは無い。誇らしげな
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