大剣持ちし片腕が二人
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た。一つの白い雲が留まっていた。日輪に雲が掛かり、齎されるはずの光は自分達に当たっていなかった。
不服そうに唇を尖らせる。何故、自分達を照らしてくれるのを邪魔するのかと、気まぐれな雲を睨みつけた。
――私達が望む日輪の光を翳らせるような雲は要らない。光を求めても届かせようとしない雲は、風に流されでもして千切れて消えてしまえばいい。
一人内心でごちて、自分達が光を浴びる事を望んだ。
この薄暗い、自分達が歩く宵闇の如き乱世の細道を抜けて、幸福の光を受けられる事を願って彼女は進んで行く。
†
袁紹軍は軍を三つに分けて、その内の二つに黄河を渡らせた。
東の文醜と郭図の軍、その数五万……白馬よりもさらに北に船を止め、簡易な陣を組んでから南下を開始した。
対するは曹操軍。東の白馬に於いては、防衛戦の準備を整えていた春蘭と流琉、そして風。彼女達は五万の軍を、城に配置している一万五千で迎え討つ事となった。
遠くに砂塵が見えた。城の付近である為に開けた平地となっているその端。
白馬は虎牢関やシ水関のような要害では無く、都である洛陽のように長い城壁も持っていない。
城に置ける防衛戦が初めての流琉は、緊張からか顔を強張らせ、口を真一文字に引き結んでいた。
「うむ……やはり軍が押し寄せる様は敵だとしても見栄えがいい。金ぴかが反射して眩しいのは趣味が悪いと言わざるを得んけどな」
隣でぽつりと零した春蘭の言を聞けば、さらに力が入ってしまうのも詮無きかな。
じわりと広がる手汗に気付き、急いで服でごしごしと拭った。
「報告では五万と聞きましたけど……」
――大丈夫なんでしょうか。
将たるモノが口にしてはいけない。それを知っているから先を続けずに春蘭を見つめた。
「ん? なに、たかだか五万だろう?」
あっけらかんと言い放つ春蘭には口を開け放っても足りないくらい。
兵法の基本は数。そして弱い敵を狙え、である。それをたかだか、と言い切る彼女に不安を感じた。
通常ならば季衣が春蘭との連携も良いので配置されるのだが……今回は何故か流琉が共に付かされている。軍師達の判断であるのだからと呑んでいるも、流琉は不安が胸いっぱいに広がっていた。
――私で……春蘭様を抑えられるんだろうか。
狙いはそんな所だろう、と思い至っている。自分が秋蘭のような抑え役として機能する、そう信じてくれているのではないか、と。
軍師達の満場一致でこの配置となった。しかし……経験が足りない自分をどうしてこんな重要な戦場に送るのか流琉には分からず。春蘭に聞いても『ふむ、そうか。まだ流琉には分からんか』と一言だけ。
そして他にも疑問はあった。
「一万と五
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