大剣持ちし片腕が二人
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風が決めた予定は不意打ちの突撃策。城での防衛戦をするだろうという温い予測、わざわざ空城計を偽って二転三転と思考遅延を仕掛けていた所を食い破る。
真正面からの奇襲と言っていい。それが出来るのは曹操軍では春蘭と霞だけ。
城壁の上でのんびりと構えていた風は、戦場の動きをじっと見やっていた。
高所から見下ろせば、目に入る範囲の戦場は手に取るように分かる。だからこそ、袁家が作った移動櫓は恐ろしいと言える。
「ふむぅ……そろそろでしょうか。順繰りに攻めて来る敵部隊はちょっと厄介でしたけど」
宙に溶ける言葉は何を思ってか。
戦場に大きな変化はない。あるとすれば、漸く典の旗が文の旗をいなしつつ春蘭の元に辿り着いたくらいだ。
袁家にしては通常の戦場。兵の被害はあちらが多く、始めの突撃が効いているのか、浮足立って包囲網さえ築けていない。
かといって何れかの部隊を切り離して城まで攻めて来る様子は無く、拍子抜けも甚だしい。
予定ではここいらで引き上げるべきである。
数とは力。如何に将が勝っていようと、時間と共にその差がじわりじわりと広がっていくのだ。
勝ちの雰囲気に呑まれて引き摺り込まれる前に退いておくか、それともこちらに引き込ませる為に少々の犠牲をやむなくさせるか……風はそれを読まなければならない。
通常ならば華琳に献策する。軍師達が各々に見解を述べて、一番最良を華琳が判断して選ぶ。
それに対する甘えは、この戦で捨てなければならない。
「……敵将の性格でしたら追ってきそうなモノですけど、軍師が他の部隊を動かしてこないのは不気味に見えたり……うーん、どうしよう」
悩む前にすっぱり決められればいいのだが、吐き出す相手がいない時というのはこうも違うらしい。
戦で不惑は難しい。英断が出来て、それが尚且つ正しいモノは少ない。どんな智者英雄であれ、どれを選ぶかで悩む事はある。
思考を巡らせ、風を見て、日の傾きを見た。
春蘭が猪々子を討ち取ればよかったのだが……決めてある予定上、それが出来ない。
「あ……」
唐突に気付いた。この戦場の違和感に。
――どうして、あんな適当で無茶な動きをする将を放っておくのか……
押し寄せる部隊の一つ一つに突進突撃、他の部隊は救援の動きも粗雑に過ぎる。まるで、別に見殺しにしてもいいような、使い捨ての駒のような動かし方。
それを許す敵であろうか? いくら桂花が一番に警戒していた田豊でないとしても、郭図は筆頭軍師に上り詰めたモノであるのに。
風の瞳に知性が輝く。敵の思惑を読み取ろってやろうと、雷光の如く巡らせる。
掴み取った答えからか、眉根を寄せ、さーっと顔を蒼褪めさせた。
「……本当の狙いは此処じゃなくて……あっちですか」
それ
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