§61 無能力者ですか? はい、一般人です
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能な限り裏方に徹していた自分たちが見つかるという事は。他の組織はおそらくもう――――
「あぁ、多分予想の通り。アンタらで、最後だ」
「……そうか」
「いや、悪いね。恨むなら師祖がカンピオーネであることを疑った己を恨むといい。――――こんなチンケな脚本の結果、師祖や師父が誅罰なんて言って動き出されたら困るんだよ」
陸鷹化の瞳に剣呑な色が宿る。この場に居た全員が死を前提とした反抗を覚悟した瞬間、
「実に殊勝な心がけです、鷹化」
場違いな、美声が聞こえた。途端に、陸鷹化の顔色が傍目でわかる程に青く染まる。
「ですがなっておりませんね。お義兄様の大事です。何故私に報告しないのですか。本来ならば折檻と行きたいところですが――――私が気付くまでにここまでやり遂げたのです。これを弟子の成長とみて今回は目をつぶりましょう。今回だけですよ」
「師父の寛大なるお心に感謝いたします。陸鷹化、この一件で師の不肖の弟子に対する愛の深さを思い知り一層と――――」
凄まじい破裂音。陸鷹化が扉にめり込んだ。喀血し、大量の血が床に飛び散る。
「馬鹿者。媚び諂うとは愚の骨頂です」
師弟の関係に硬直していた他の人間が動き出す前に、武の頂は処刑を告げる。
「さて。お義兄様に狼藉を働いた者共よ。纏めて塵となりなさい」
美声を最後まで聞いたものは居なかった。その部屋の中で、人の形を保っていられたのは陸鷹化ただ一人。他はすべて塵と化す。次いで、家具の数々が無に還っていく。そして全てが壊れていく。空気を震わせる振動が、あらゆる物質を原子レベルで粉砕し、肉眼で視認できない大きさにまで破壊していく――――
〇〇〇
呪力が底を尽きた感じがした。最後の避水訣が残りを全部持って行ったらしい。
「うっわ、ぎりぎりだったな今回」
ヤマの権能で超再生と不死を得ているが、それは呪力を消費してのものだ。呪力が尽きれば当然、再生など出来ない。カンピオーネにある肉体の頑強さが無い黎斗には、少しの傷でも致命傷となりうる。今回は想像以上に限界だったらしい。
「ジュワユーズ!」
影を開いて問いかける。先ずは、幽世にある倉庫の確認だ。あそこは権能による各種防御を張ってある。権能封印により機能停止していたら一大事でしかない。蒐集品の散逸どころか中に収容してある生徒達はなす術も無く死んでしまうだろう。バラバラ死体の作成にも荷担するなんて展開にはなりたくない。
「……随分な有様だな、主。こちらは大丈夫だ。空中倉庫は問題ない」
水盆で見ていたのだろう。こちらの疑問に適解が返ってくるのは頼もしい。そしてこいつはどうやら今までに仕掛けた権能を強制解除、なんて狂った性能ではないらしい。本
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