第19話 器量
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宇宙歴七八五年八月〜一〇月
俺の新任地となったケリム星域はバーラト星域より八八〇光年の位置にある有人星域であり、互いに巨大な経済圏を構成していることから、両星域間の交通の便は極めて良い事で知られている。
ハイネセン中央宇宙港から出発する旅客便の数はサンタクルス・ライン社の二〇便/日をはじめとして、相当な数に上る。またフェザーン方面とイゼルローン方面への分岐点にあたるジャムシード星域とも隣接していて、その地理的経済効果はかなり大きい。
前世の例えで言えば、バーラト星域が首都圏、ケリム星域が中京圏、ジャムシード星域は近畿圏といったところか。
バーラト星域ハイネセンより、ケリム星域主星系イジェクオンまでは二回の長距離ワープと四回の短距離ワープ、それと通常航行で約五日間。俺の乗るサンタクルス・ライン〇七七六便は定刻通り惑星イジェクオンの静止軌道上に到着。そこから大気圏突入用のシャトルに移乗し、降下。俺はイジェクオンの旅客用宇宙港に降り立った。
このイジェクオン星系はただケリム星域の主星系というだけではない。この星系からは複数の辺境星区へと分岐する航路が存在する。特に原作で登場する恒星系のうちでもクーデターで最初に蜂起した第四辺境星区の中心地であるネプティス星系への直接航路も存在する。先ほどの例で言えば、バーラト=ケリム=ジャムシードが東海道、ケリム星域イジェクオン星系は名古屋、ネプティスは岐阜あるいは津・四日市と言ったところだろう。
守るべき最優先の航路は当然バーラト星域方面。次にジャムシード星域方面となるが、他にも大小様々な航路があるわけで、この星域の警備艦隊が守らなければならない宙域は膨大な数になる。その為、それなりの規模の戦力が配置されている。
だがここで問題がある。星域を防衛する艦隊である星系警備艦隊(ガーズ)と星間巡視隊(パトロール)の職域区分の問題だ。両者とも軍艦が配備されている事には違いないのだが、星系警備艦隊は総数こそ少ないが戦艦や宇宙母艦を中心とする重装部隊で、星間巡視隊は多数の巡航艦や駆逐艦で構成される軽快部隊である。警備艦隊は基本的に単一星系の警邏・防衛、巡視艦隊が星系・星域間の警邏防衛と大まかに活動範囲が決められているわけだが、星系内から出てこないノロマで動きのトロい警備艦隊、あっちにフラフラこっちにフラフラ肝心なときに火力不足で役に立たない巡視艦隊、と両者の仲はすこぶる悪い。
だったら最初からそんな面倒な区分をなくしてしまえと俺は正直思うわけだが、それこそド辺境でもない限り両者は並立している。はっきり言えばポストの数と警邏効率の問題だ。両者を統一すれば、統合部隊の指揮官ポストが増えてしまう。それが統合作戦本部防衛部の下部組織なのか、宇宙艦隊司令部の下部組織なのかでまた一悶着するだろう。
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