58章 信也、バーチャルな下北音楽学校の講師をする
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大問題でーす」と、前列の女子中高生たちが、さわいだ。
「そうなんですよ。歌いたいのに歌えないって、心が沈む、哀しいことなんですよね。
あっはは。わらって、ごまかしていられないくらいに。
まあ、今日のように、ぼくが3オクターブは、出せて、歌えるのも、
自己流ですが、ヴォイス・トレーニングをしてきたからなんです。
しかし、不思議なんですよね。なんで、好きな歌が、音程が高すぎて、
歌えないなんていう状況が、現代人の前に出現してしまっているのかってね。
人間の声帯というか、声を出すメカニズム(仕組み)に、もともと欠陥があるとしか
思えないくらいに、普通の、一般の人には高い声が出しにくいのですからね」
会場のみんなは、静かに、信也の話に聞き入っている。
「最初にお話ししましたように、人間は声というものは、言葉でもって
意味も伝えられる、世界一の楽器だと思うんです。
言葉も伝えられる最高の楽器だって、おれに教えてくれたのは、
高校のときの音楽の先生だったですけどね。あっはっは。
おれはその話に、無性に、本当になぜか感心したんです。あっはっは」
会場からも、わらいがおこる。信也のファンでもあるらしい、特に女の子たちのわらい声が、
飾りけがないミーティングルームを華やかにする。
「それで、きょうの授業のタイトルの、『高い声を出す方法』の、ぼくの結論なんです。
誰にでも、ふだん出している地声から、声がひっくり返って、裏声になるという、
換声点とか呼ばれている音域の区分があるんですよね。
その声の変わり目を、上手にクリアして歌えるようにするのには、
トレーニングしかないだろうというのが、ぼくの結論なんです。
要するに、歌うための筋肉があると言われているのですが、それを鍛えていくしかないと。
筋力トレーニングを、日々続けられるかどうかが、3オクターブの音域を
獲得できるかどうかの分かれ道なんだと思うんです。
最初はうまく行かないにしても、歌が好きならば、
楽しんでやって行けることだと思うんです。そんな努力をしなくても、
最初から、3オクターブを歌える身体に、自然界はなんで
してくれなかったのかな!?と、今でもぼくは思いますよ、まったく。
しかし、人間がサルから枝分かれした、パンツをはいたサルのようなものだとすれば、
進化の途中なのだから、高度な芸術的な楽しみが、そう簡単に手に入らないのも、
仕方ないのかな!?とか思ったりもしますけどね。あっはは」
信也がわらって、頭をかくと、会場は、また、明るいわらい声につつまれる。
「しかし、まあ、ぼくの自由勝手な仮説といってしまえば、それまでですが、
歌や音楽とかの、芸術的なことが、ぼくた
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