第1部
第8話 戦艦棲姫、観艦式二潜入ス〜其ノ弐〜
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横須賀基地 PM4:50
「姫、よろしかったのですか?」
コーヒーを傾けつつ、観艦式を見に来た子供達とはしゃぐヲ級を眺めていると、隣に座るル級が心配そうに此方を
見つめていた。
「……なんの事かしら?」
「惚けないでください……彼の事です。
我々と彼等は、本来なら敵対している立場なのですよ?
彼が私達に刺客を差し向けないとも限りません」
ル級が立ち上がり、身を乗り出した。
それを制するように片手を挙げ、コーヒーを口に運ぶ。
「彼が私達に何て言ったか忘れたの?
君達が誠意を持って人類に歩み寄ろうとするなら、此方から敵対する気は無い。
我々も誠意を持って君達を理解し、歩み寄ろう≠ニ……そう言ったわ」
「…………しかし……」
「私はね、ル級」
コーヒーカップを置いて空を見上げる。
若干緋みがかった夕焼け前の青空を、零戦とジェット戦闘機が舞うように飛んでいる。
まるで兄弟のように寄り添う戦闘機達を見ながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「もう……戦いたくないの。
私は覚えてる……空を埋め尽くす艦載機と、死に喘ぐ船員の顔を。
私を最後まで生かそうとしてくれたあの人達が、苦しみながら死んでいくのを……ね」
「……」
「だから、だからこそ……私はもう誰も悲しませたくないの。
……私に水上特攻セヨ≠ニ命じた上層部を怨んでいない、と言えば嘘になるけど……それでも、私はその決断に文句をつける気は無いわ。
私達は兵器……その身を持って、護国の礎となれたのなら、私は満足なの。
私達がそうやって護った国の人々に砲を向けるなんて……私には出来ないわ」
「…姫、記憶が……ッ??」
話し終え、髪を掻き上げながら、青く平和な空を見上げる。
3機の飛行機が、沖へ向かって飛んで行く。
長くスマートな体躯が特徴的な艦載機……恐らくは艦娘の彩雲だろう。
その彩雲を護るように両側に陣取るジェット戦闘機の計3機が、鮮やかに輝く彩雲の中を飛んで行く。
彩雲の中を飛ぶ彩雲偵察機の姿は、とても幻想的だ。
「……貴艦は私の護るべきグレード1(艦隊旗艦)…。
私は、貴女に忠誠を誓う身です。
貴女の意思は、私の意思です……私は、貴女に従います」
「……ありがとう、ル級」
「あら、つまらないわねぇ〜……」
突然の声に驚き、ル級と共に振り向いた。
そこにいたのは、長く白い髪にセーラー服の様な物を纏った女性だった。
後ろの席に座って優雅に寛ぐ其の姿に、私は見覚えがあった。
「8ヶ月振りかしら?
また会えて嬉しいわ、戦艦棲姫」
「……空母棲姫」
射殺さんばかりに睨みつける視線をモノともせず、空母棲姫はてにしたカップに口を付けた。
「なんの用かし
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