第四部五将家の戦争
第五十三話 変わりゆく日々に
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手に臆することなく笑みを浮かべている。
――果断な方ですね。
「――芳峰殿は何をお求めでしょうか?」
豊長は柔らかな、それでいて鋭さを秘めた声で尋ねる。
それを受け止め、若き子爵は応える。
「融資をしてもらえる店、それも信用が高く大金を即座に用意できる大店を」
「ほう」
豊守様が身を乗り出す。
「雅永君」
故州伯が片眉を跳ね上げる。
「君がもし、金に困っているのならば、まず私に用立てる努力をさせて貰いたいのだがな」
背筋を伸ばし、早口で捲し立てる。長女をとつがせた相手だけあり、彼の矜持に触れたのだろう。
「――あぁ、いえいえ、違います。私が金に困っているわけではないのです。
その――」
そう言って芳峰子爵は口を濁した。
「御父様、そうした家政の問題ではありませんの。」
苦笑した吉峰紫がとりなす。
「有り体に云えば、今までと違って需要に私達が答えられなくなってきたのですわ」
妻の助勢を受けて雅永子爵も改めて説明する。
「需要にこたえる必要があるのです。何しろ、有事のあれこれで鉱物は幾らあっても足りぬのですよ。とにかく、年が変わる前にあれこれと準備をしたいですし、これからも物入りですから、新しく両替商の大店と結びを作っておきたいのです。
我が家が提携していた両替商だけでは手が回らん状況でして」
子爵家当主が直々にというのも珍しいが、芳峰家(が経営主をしている鉱工業街)が取引しているのは地元の両替商である。成長してはいるが規模自体は皇都に集う大店とくらべるとやはり劣ってしまうのが実情であった。
「――ふむ。そうなると内務勅任参事官として、手助けはできるな」
芳州のほとんどは天領である。直接、芳峰家の領土にあれこれは出来ないが
「はい、そうした点では長期的な面では義父様と豊守様にもお願いしたいことがありまして――まぁその話は操業資金を調達してからになりますが」
「成程!では先立つものを手に入れることからですな。お手並み拝見と行きましょう」
豊長がにたりと不敵な笑みを浮かべた。
同日 午後第二刻半 皇都 両替商・三蔵屋本店
「結局のところ、儲け時なら儲け時なりに心配事があるのですよ。
本当に、楽な儲け話なんて有るはずもないという事です。」
芳峰紫はこめかみを叩きながらため息を漏らし、芳峰子爵が後を引き取る。
「単純に現状を維持するだけならば現在の財政状況でも十分、対応できるのだよ。
だが御国はそれ以上を我らに求めているのだ」
「成程――」
二人に相対するのは禿頭の男性であった。
「現在、必要なのは生産量拡大の為に人員の増加、および鉱山施設・製鉄工場の拡大。
そして能率上昇の為に労働状況改善を行うために必要な予算です。我々が君たちに借り
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