18話、丘陵の手前で(後編)
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あの丘ではどうでしょうか?」
俺は駄目でもともとの精神で真ん中の丘を指差した。別荘地が少し見えるけど、無人で放置されていたから文句なしの可能性もある……
「斉藤さんのグループからは食糧と診察でお世話になっていますから極力協力したいのは山々ですが……」
高橋さんが渋った様子を見せる。押し切れそうな雰囲気を感じたが、高市さんがすかさず「あの丘から別荘地の一部が見えてしまいます」と抗議した。
高橋、高市ペアはかなり良いコンビなのかもしれない。
「分かりました。境界は真ん中の丘の西斜面と平地の境にしましょう。私達はその奥の丘陵を拠点にします。真ん中の丘はそちらにお任せしますよ。その代わりと言ってはなんですが、南にある林道は県道に繋がっているだけなので我々の自由にさせて欲しいですね」
別荘地組は自分達だけ相談させて欲しいと言って俺にことわり、車の陰に隠れてひそひそ話をしている。
「…………先に頂けるという食糧を見せて貰ってもよろしいですか?」
「ええ。構いませんよ」
クール車に積んである食糧の現物を見せたら三人共黙ってしまった。特に磯部さんはあからさまに物欲しそうな顔をしている。相変わらず高橋グループは食糧不足のようだ。
「これは今すぐ持って帰って頂いて構いません。妥結しなくても弁当の方は返せと言いません。それに境界が決まれば、今回用意した食糧と同じ量をもう一度提供しましょう」
以後の話はとんとん拍子に進んだ。そして高橋さん等三人はクール車を連れて別荘に引き上げ、他グループとの交渉に向かうことになる。
俺はここでお留守番だ。すぐに妥結すらなら良し、説得に時間がかかりそうなら日をあらためるつもりだ。
それにしても今日二度目の暇な時間がやってきた。しかも、今度は誰も近くにいなくて暇つぶしも出来ない。高橋グループの監視役でさえ丘の上に居る。
もうコーヒーも飲み飽きたしお花畑やら芝刈りに行くのも飽きた。
仕方ない。丘の上の連中からはパッと見でゾンビの行動に見えるかもしれないが、ひたすら車の周りで早歩きをして時間を潰すことにする。
しかもこれが運動不足解消に役立つ上に意外と楽しい。
そうこうするうちに辺りがだんだん暗くなってきた。そして、ようやく丘の上にヘッドライトを点灯させた車が数台姿を見せる。
冷蔵車もいるので間違いないなく高橋さんが来たのだろう。
薄暗くなった道を高橋さんと高市さん、磯部さんが作業服を着た新顔を連れて近づいてきた。
「お借りしたクール車をお返しします。食糧はどのグループにも喜ばれました」
「それは良かった。キャリー、車両の回収を頼む。ところでそちらは県営保養所のグループリーダーの方ですか?」
俺は予想の一つをぶつけてみる。次の予想は高橋グループの副代表だ。
「いえ、こちらは十五人
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