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ゾンビの世界は意外に余裕だった
18話、丘陵の手前で(後編)
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複雑な人間関係のせいで合流出来ないらしい。

 最後に高橋グループを忘れずに加えると、別荘地に本拠地を置くグループは大小七つになる。

 さらに別荘地の東の県営保養所本拠地にしているグループが、別荘地の住人の一部を仲間に加えているので時々見回りにくるらしい。このグループは高橋さんのグループに匹敵する規模なので、境界を定めるなら同意を取っておきたいとのこと。

 かなり面倒そうだ。大日本共和国の危機なんだからせめて同じ別荘地に住んでいる住人は、一つのグループで頑張れよと言いたくなる。

「なるほど。協定を結べないならこちらで勝手に線引きすれば良いだけですね」

 まあ高橋グループとだけ協定を結んでも良いが、それはそれで高橋グループと他グループとの関係を悪化させてしまうかもしれないので、俺が泣きながら泥を被ろう。

「お待ち下さい。いずれのグループとも私達は良好の関係を築いています。説得する時間を下さい」

 研究所に一番厳しい視線を向けてきた高市さんが、境界を定めることに乗り気のようだ。これはアンドロイド達が突撃銃で武装しているおかげかもしれない。

 さて、高市さんの申し出にどう答えるか。

 今まで高橋グループのトップしか研究所の存在を知らなかったにせよ、今は何十人もの高橋グループ構成員が、西側のどこかに隣人がいることを知っている。

 しかも交渉で境界を決めても勝手に線を引いても、研究所のことは他グループにいずれ知れ渡ることは変わらない。

 さらに高橋グループに食糧を分けたことまでバレたら、かなり面倒が起きそうで嫌な予感がする。

 やはり俺としてもお互い納得の上で境界を定めておくメリットは大きいようだ。気前が良い上に話せば分かると思わせておけば、高橋グループも良き隣人として俺達の防波堤になるだろう。

 研究所からの略奪を望む人達が別荘地やその周辺で主流になる可能性も低下させられるかもしれない。少なくとも研究所の要塞化の時間は稼げるはずだ。

 覚悟を決めた俺はニンジンを高橋グループの鼻面にぶら下げて面倒を押し付けることにした。

「分かりました。高橋さん達には別荘地の取りまとめをお任せします。それと境界が決まったら差し上げようと思って僅かですが食糧を持ってきています。これを他グループとの交渉の材料にして下さい」

「食糧ですと! いや、少しでも何でもあればあるほど助かります。何時も申し訳ありません」

 境界を決めたらという条件が聞こえなかったようだ。俺が苦笑いを浮かべたら高市さんが気を利かせてくれた。

「高橋さん。斉藤さんは境界が決まったらとおっしゃっています。他のグループを説得する前に、どこを境界にしたいかをきちんと聞くべきではないでしょうか?」

「高市さんのおっしゃる通りですね。斉藤さん達はどこを境界にしたいと考えているのですか?」


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