幕間二 氷炭、相愛す
3幕
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フェイを助け起こした。上にいたフェイがどいて、セルシウスも起き上がる。
「大丈夫? 本当にどこもケガしてない?」
「多分、してない」
「もう……今ので寿命が縮んだよ」
「ゴメンナサイ」
「セルシウスは? 力、だいぶ使ったでしょ? 体は何ともない?」
すると、ふいにセルシウスがくすくすと笑い出した。
『お前たち二人とも、本当にあの馬鹿に――ハオにそっくりだ』
ジュードとフェイは顔を見合わせた。その間にも、セルシウスは笑い続けた。
ジュードたちはマクスバード/リーゼ港に渡った。
セルシウスには一旦、実体化を解いて休んでもらっている。
今日はここで一泊して、明日、セルシウスが最後に示した場所へ行く予定だ。
宿の前に着いたのに、フェイは沈みゆく夕陽を眺めて動こうとしない。その理由を、ジュードも何となしに察していた。
ジュードはフェイの隣に並んで彼女に声をかけた。
「えらかったね、フェイ」
「え?」
「セルシウス、助けてあげたでしょ。今まで『色々』あったのに。よく頑張ったね」
10年にも渡る実験体としての扱いも、大精霊からの不条理な虐待も超えて、「精霊」を守った。ただ庇ったというだけに留まらない。フェイにとっては大きな前進のはずだ。
「えらくなんか、ないよ。もっと早く、こうできればよかった」
潮風が色のない髪を吹き上げ、少女の表情を隠した。
「アスカ、出してあげればよかった――」
ジュードはまじまじとフェイを見つめた。
今の台詞は今までのフェイでは絶対に口にしない台詞だった。
(フェイは精霊を嫌ってた。けどセルシウスのことが、フェイに大きく影響した。セルシウスがハオ博士と接して何かを感じて、そのセルシウスと接してフェイの心境が変わった)
一方だけが影響を与えるのではない。影響し、影響されて、互いが少しずつでも変化していく。それこそが――共存。
それに気づいた時、ジュードの中で、バラバラだったパズルにピースが嵌っていくような感覚があった。
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