暁 〜小説投稿サイト〜
フェアリーテイルの終わり方
幕間二 氷炭、相愛す
3幕
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
フェイを助け起こした。上にいたフェイがどいて、セルシウスも起き上がる。

「大丈夫? 本当にどこもケガしてない?」
「多分、してない」
「もう……今ので寿命が縮んだよ」
「ゴメンナサイ」
「セルシウスは? 力、だいぶ使ったでしょ? 体は何ともない?」

 すると、ふいにセルシウスがくすくすと笑い出した。

『お前たち二人とも、本当にあの馬鹿に――ハオにそっくりだ』

 ジュードとフェイは顔を見合わせた。その間にも、セルシウスは笑い続けた。





 ジュードたちはマクスバード/リーゼ港に渡った。

 セルシウスには一旦、実体化を解いて休んでもらっている。
 今日はここで一泊して、明日、セルシウスが最後に示した場所へ行く予定だ。

 宿の前に着いたのに、フェイは沈みゆく夕陽を眺めて動こうとしない。その理由を、ジュードも何となしに察していた。

 ジュードはフェイの隣に並んで彼女に声をかけた。

「えらかったね、フェイ」
「え?」
「セルシウス、助けてあげたでしょ。今まで『色々』あったのに。よく頑張ったね」

 10年にも渡る実験体としての扱いも、大精霊からの不条理な虐待も超えて、「精霊」を守った。ただ庇ったというだけに留まらない。フェイにとっては大きな前進のはずだ。

「えらくなんか、ないよ。もっと早く、こうできればよかった」

 潮風が色のない髪を吹き上げ、少女の表情を隠した。

「アスカ、出してあげればよかった――」

 ジュードはまじまじとフェイを見つめた。
 今の台詞は今までのフェイでは絶対に口にしない台詞だった。

(フェイは精霊を嫌ってた。けどセルシウスのことが、フェイに大きく影響した。セルシウスがハオ博士と接して何かを感じて、そのセルシウスと接してフェイの心境が変わった)

 一方だけが影響を与えるのではない。影響し、影響されて、互いが少しずつでも変化していく。それこそが――共存。

 それに気づいた時、ジュードの中で、バラバラだったパズルにピースが嵌っていくような感覚があった。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ