彼の失敗
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。・・・何故か、とても気不味そうな顔をして。
「海童様! 野暮用は終わりましたか?」
「・・・ああ」
「凄い地震でしたよね!? 海童様はお怪我はありませんですか?」
「・・・いや、大丈夫だ」
「それにしても不思議な地震だったよね。大きくてすぐ終わって脈絡も無くて」
「・・・」
「あれ? どうかされました、海童様?」
さっきからずっと海童の調子がよくない様に見えたイナホは、覗き込む様な形で海童に心配そうな表情を見せる。春恋も、大丈夫だろうかと少し腰を曲げていた。
暫く黙っていた海童は・・・やがて決心したように口を開いた。
「さっきの、地震だがな・・・」
「はい? ! まさか、本当はお怪我を―――」
「怪我はしてない・・・いいか? 落ち着いて聞けよ?」
「え、ええ・・・何なの一体」
「さっき起きた地震はな・・・その―――――
多分、いや間違い無く・・・“俺の所為”だ」
「「え・・・・?」」
「さっきのは・・・俺が引き起こした地震なんだよ」
「「ええええぇぇぇええええーーー!!??」」
・
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遡ること数分前。
野暮用だと開けた場所に出かけていた海童は、自分の力をうまくコントロールできるように特訓していたのだ。
しかし、地面に向かって撃てば地面が粉々に。かといって目の前に撃っても景色が吹き飛ぶ。
(・・・なら空ならば大丈夫じゃないか?)
そう思いたって、ちょっとづつ力を込めながら打ち出していく練習をしていたのだ。
思った通り分かりずらいという弊害があるが、練習そのものは上手くいき景色にも被害を出さなかったのだ。
(おお、成功成功! これならいけるな!)
・・・ここで彼は、大失敗を犯す。
空中なら大丈夫だろうと調子に乗った海童は、入学式以上の力を込めて虚空へ全力で拳を叩きつけたのだ。
「うおおおおっ!!!」
空気が爆発し砕け散った様な轟音が響き、直後に膨大な量の衝撃波。力を使う本人だからか海童自身にはさして影響は無かったが、ここから先が問題だった。
衝撃波を受けて彼の周りの地面が襟れたと思った瞬間・・・・
「ぬおおっ!? 地震か!?」
まるで自分を中心にしたかのように、大きな揺れを持つ地震が発生したのだ。揺れはしたものの普通に立っていられた海童だったが・・・すぐに自分が犯した失敗を悟る。
(あの爺さんが言っていた『地震の震源』てのは・・・比喩表現じゃ無かったのかよ・・・!?)
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