第18話 嵐の後始末
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は、休暇中の交通事故で亡くなった一人だけ。七八〇年生、任官拒否六七名も含めた卒業生四五三六名のうち、今あるのは四五三五名。これからは加速度的に赤字の名前が増えていくだろう。次が自分でないとは限らない。
自分の執務机の電源を投入し、携帯端末を填め込む。机上に現われた投影画面には複数箇所からの仕事のメール以外に、最優先事項と親展のマークがつけられたメールが表示されていた。本日一六三〇時に人事部第一三分室に出頭せよとしか書かれていない。それは中尉への昇進と、新しい任地の通告に他ならない。俺はフィッシャー中佐にその事実を淡々と告げると、中佐はゆっくりと頷き黙って軽く肩を叩いてくれた。統計課長のハンシェル准将は今更ながら「貴官がいることで査閲部も以前に比べてずいぶんと活気が増していたんだがな」と言ってくれたし、クレブス中将は「そうかご苦労」の一言だったが年季の入った力強い握手をしてくれた。査閲部の老勇者達はみな俺を思い思いに俺との別れを惜しんでくれた。
一六三〇時。俺と同じ統合作戦本部に初任することになった七八〇年生一〇数人が、人事部第一三分室の前に集まっていた。俺が到着すると、顔を知っているせいか皆俺に向かって敬礼してくる。先任順序とはいえ同期が、軍隊のしきたりに染まりつつある事を、俺は答礼しつつ感じざるを得なかった。
一六三三時。俺の名前が呼ばれ、分室内の応接室に入ると、人事部の壮年中佐が補佐役の若い女性兵曹長と並んで俺を迎える。形式だった挨拶に続いて、中佐の手から辞令が交付され、兵曹長の手で少尉の階級章が外され新たに中尉の階級章がジャケットの左襟につけられる。ものの一・二分の儀式だが、これが地獄への門へ進む必要な儀式なのだ。
俺は辞令を開いて、先ほど中佐から告げられた次の赴任先を確認する。
宇宙艦隊司令部所属 ケリム星域方面司令部傘下 第七一星間警備艦隊司令官付副官。
フレデリカのようにいきなり正規艦隊の艦隊司令官付副官ではないにせよ、士官学校首席卒の中尉としてはまずまずの赴任先だ。しかも事実上、上官は警備艦隊司令官と参謀数名のみということ。
ケリム星域といえばハイネセンのあるバーラト星域の隣接星域であり、緊急的な事態がない限り帝国軍との戦闘はないといっていい、いわゆる安全圏。
ただしケリム星域はバーラト星域に次ぐ同盟有数の巨大な経済圏を有している。星間警備艦隊の主任務である交易路の防衛や星系間航路のパトロールは、同盟の経済自体を防衛していると言っても過言ではない……またシトレのクソ親父が武勲を立てさせない程度に学習してこいとの干渉でもしたのかと思い、第七一警備艦隊司令官の名前を確認したところで、俺は久しぶりに足が震えるくらい愕然とした。
顔写真には生気に満ちた壮年寸前の男が映っている。その下に階級
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