第18話 嵐の後始末
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ておきたい気持ちも分かる気がする」
カップの中身を一気に飲み干した後、どうにか落ち着いた様子で、グリーンヒルはソーサーに戻し足を組み直す。
「ここでの話は他言無用に願いたい。誓えるかね?」
「誓います」
どうせろくでもないことを言うのは間違いない。俺はそう思ってあっさりと応えた。そしてやはりグリーンヒルの口から出た質問は、やはりろくでもないものだった。別な意味で。
「君は近年における現在の政治の腐敗と経済・社会の弱体化に関してどう対処すべきと考える?」
俺はあえてその質問に答えることを拒絶した。その質問に対する答えは既に用意してある。だがこの答えを今グリーンヒルにするには、あまりにも俺の地位は低すぎ、権力も実力もない。この会話を録音し、後日俺を攻撃・処刑するための証拠にする可能性だってあり得る。少なくともその質問に答えるほど、俺はグリーンヒルという人間を信用してはいない。だいたい一介の少尉にする質問ではない。
あるいは、と思う。グリーンヒルはこういった『お前だけが頼りだ』みたいな甘い囁きで、多くの軍人を籠絡してきたのではないかと勘ぐってしまう。それは原作でも前線で実働部隊を指揮すると言うよりも、参謀や各部局でキャリアを積み上げてきた彼に許された、あるいは前線指揮官としての功績に乏しい彼にできる唯一の人誑しの術なのかもしれない。
グリーンヒル夫人を仲介して、フレデリカとの完全な手打ちを終えたアントニナと共に、ゴールデンブリッジの官舎へと戻る間そんなことばかり考えていたので、すっかりアントニナのご機嫌は悪くなってしまった。百貨店やアイスクリームスタンドで散々散財させられて、さらに山のようになったお土産を官舎まで運ばされて、ようやくアントニナは落ち着いてくれた。さらには七月の休暇には費用すべて俺持ちで、家族全員とフレデリカを郊外のコテージへ連れて行く約束までさせられた。さすがにそれは俺の給与では不可能なので、やむを得ず、『真にやむを得ず』俺は高級副官(ウィッティ)も巻き添えにせざるを得なかった。ウィッティが二つ返事で了承したので、よからぬ気配を感じた俺は当日必要時以外は奴に目隠しさせておいた。
そんなさんざんな六月と七月を過ごし、俺はようやく士官学校卒業より二回目の八月を迎えることになる。
この時期は統合作戦本部に限らず、あらゆる部局・部隊がざわめきの坩堝に落とし込まれる。昇進する者、配置転換される者、昇給する者、逆に左遷される者。軍に新たに加入する者達を含め、多くの軍人軍属のこれから半年ないし一年、あるいは数年先の未来が決められる。
自動的に中尉へと昇進することになる俺ら士官学校卒二年目は、いよいよ実働部隊への配属が解禁される。戦場・戦火の中へと向かうことになる。今年度の同窓名簿で名前が赤字になったの
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