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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
神意の祭典篇
40.神意の祭典
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噛み砕く。
 矢瀬の過適応者(ハイパーアダプター)の能力はかすかな振動や、微妙な気圧の変化を感知する。錠剤によってその範囲は、半径数キロメートルにまで拡張される。
 地上にいる人数は二人。息の使いから男女のペアであることがわかる。
 さらに神経を研ぎ澄ますと矢瀬はその正体に気づいて舌打ちをする。

「あいつらなにやってやがるんだ」

『さあな。深夜のデートじゃねえか?』

 ククッ、とモグワイが小馬鹿にするように呟いた。
 地上に現れた二つの人影。彩海学園の制服を着た気怠そうな伝説の吸血鬼、緒河彩斗と同じく彩海学園の女生徒の制服に黒いギターケースを背負った獅子王機関の“剣帝”、逢崎友妃だ。




 エレベーターで七階から一階へと降りる。無機質な鐘の音が鳴る前に彩斗と友妃は歩みを始める。狭い長方形の空間の扉が開いと瞬間、その足で強く床を踏み込み、エントランスへと目指す。
 エントランスからマンションの外へと出る最後の自動ドアをくぐり抜けそこから本格的に走り出す。
 あてもなく走り続けた彩斗たちがたどり着いたのは、古城と金髪の吸血鬼が戦闘を行ったあとがまだ残っている市街地だった。
 わずかに魔力の余韻が感じられる。

「それでなにかいくあてでもあるの?」

「いや、全くだ」

 即答だった。確かに行くあてはなかったが、考えはあった。

「とりあえずは、人のいない場所に向かうつもりだ。あいつが和解なんて生ぬるいことで納得するとは思えねぇしな」

 市街地で金髪の吸血鬼と戦うことになれば被害の度合いは計り知れない。あいつが彩斗から銀の刃を使って奪った力の正体が“神意の暁(オリスブラッド)”の眷獣だとするならなおさら戦うわけにはいかない。記憶のどこかでそれをさせてはいけないと誰かが助言しているようだ。
 そもそも昨夜だって古城と彼が戦ってあれだけの被害で済んだのが不思議なくらいだ。
 彩斗は思案する。市街地に被害を与えることがなく真祖クラスの眷獣が暴れても崩壊することがない頑丈な建造物。
 絃神島に関する記憶を巡らせる。
 そうか、と彩斗が一つの答えを呟いた。

「……十三号増設人工島(サブフロート)

 四基の超大型浮体式構造物(ギガフロート)の周囲にある拡張ユニットの一つだ。本来なら燃えないゴミを詰めこむために作られた廃棄物処理殻(ダストボックス)などのゴミの埋め立て施設になる予定だった場所だ。しかし現在、十三号増設人工島(サブフロート)の建設は進んではいない。それは九月の半ばに起きたテロ事件、黒死皇派との戦闘が行われたせいだ。

「そこって黒死皇派と交戦した場所だよね?」

「ああ。あそこなら市街地へと被害も少なくすむし、強度にも多分問題はないだろう」

 しかし
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