SS:終わりの思い出(完)
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が自身の有能の証だと思っていたからだ。
それが消えた。
彼を彼たらしめる重要な要素。
傲慢と自信の源だったプライドが瓦解した。
「そんなにずっと聞きたいんなら、終わりのない歌でも歌ってみるか?」
「・・・・・・?」
怪訝な顔をするそいつに聞かせるために、弦をかき鳴らす。
この中に除け者にされて、たった一人で枕を濡らした日もあるだろう――
もう嫌だって叫んでるけど、そう思ったことは今までも何度もあるんじゃないのか――
真実ってのは受け入れるその瞬間が本当は一番怖いから――
そこから逃げ出そうとしたことも、何度も何度もあるはずだ――
そんなこの世界のどうしようもない連中のために、歌を歌おうじゃないか――
まるで人を貶しているような言葉も、時には思いやりの裏返しだってことがある。
上手くいかないからっていじけているそれも、本当に乗り越えられない壁かは自分にしか分からない。
だから今は解決は出来なくてもいい。まずは明日を迎える事から考えよう。
その明日を迎えるのがどうしようもなく苦しいのなら、満足するまで聞いていけばいい。
終わりのない歌を紡ごう、ずっとずっと紡ごう――
打ちひしがれた馬鹿どもや、どうしようもない屑のために――
お前のために、皆のために、そしてお前らの仲間の俺のために――
夜が明けた頃にはまた笑って立ち上がれるように――
終わりのない歌を紡ごう、ずっとずっと紡ごう――
寝落ちするまで、その日は歌い続けた。
目が覚めたらいつもいる宿屋に運び込まれてて、宿主のエギルに「もう少し規則的な生活をしろ」と説教された。俺が寝てから、あの男が俺をここまで運んでくれたそうだ。
終わらない歌を歌うとか言っておいて眠気に負ける自分の愚かさを呪ったが――
「そういえばあいつ、帰りに終わらない歌を・・・とか呟いてたな。お前の歌か?」
「だから俺じゃなくて昔のバンドの・・・まぁ、いいや」
その後の話で、あいつは「聖竜連合」に復帰してまた戦い出したらしい。
周囲からの目は厳しいが、能力重視のあそこではそれ位でへこたれる奴は使い物にならない。
噂によると彼の部屋からは毎晩同じ歌が聞こえてくるという。あれだけ長いこと歌っていたから覚えてしまったらしい。
終わらない歌を歌うのは、俺じゃなくてあいつになったらしい。
自分の心を自分で支えて、あいつはまた立ち上がった。
= =
「――ん。これで終わりだな」
「え?終わりって?」
一通り話し終えた俺は、そこで話を区切った。
俺の発言に首を傾げるユウキだが、終わりは終わりだ。ありていに言うと――
「これ以上はストーリー無いぞ。数日後にキリトがゲームクリ
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