暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
優しさに包まれて
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いる。よく見ればその他のパーツもマサキ君の落ち着いた雰囲気と相まって、クールで大人びたイメージに整っていた。冷めかけたコーヒーカップに手を伸ばしながらその顔を覗いていると、不思議と心臓がトクトクと高鳴って――

「……何か?」

 顔を上げたマサキ君と目が合った。

「へっ!? う、ううん、なんでもない!」

 慌ててカップに残ったコーヒーを飲み干す。自分でも、頬が真っ赤になって熱を帯びているのがよく分かる。何とか話題を摩り替えようとして、わたしは軽く手を合わせた。

「ごちそうさまでした。えっと、コーヒーありがとう。とっても美味しくて、びっくりしちゃった。こんな趣味があったんだね」
「下手の横好きだ。と言っても、作るのはコーヒーメーカーだがな」

 眉一つ動かさずに返すマサキ君。その姿からさっきの化学実験みたいなコーヒーの作り方を連想してしまって、わたしはまた噴き出してしまった。

「……何か?」
「ううん、なんでもない」

 笑い出すのを堪えたまま、首を振る。その後はまたお互いに無言の時間が続いたけれど、マサキ君の顔を見ていると退屈はしなかった。一度伸びをして、ソファに背中を預ける。

「ん……」

 すると、途端に瞼が重くなった。ダメ、ここで寝たりしちゃ……。頭の中ではそう思うものの、耳元で囁くような睡魔に誘われ、視界は徐々に狭まっていく。
 SAOに入ってから、リラックスして熟睡なんてしたことがなかった。いつも怖くて、不安で、寂しくて……震えながら自分の体を抱きしめて、ほんの数十分だけぎゅっと両目を瞑っていたら、いつの間にか少しだけまどろんでいて。そんなことの連続だった。それが今は、これ以上ないくらいに自然に眠気がやって来ている。
 とにかく、自分の部屋に戻らなきゃ……そう自分に言い聞かせて、最後の気力を振り絞って立ち上がろうとして――その瞬間、ぼやけた視界にマサキ君の瞳を見つけた。クールで、理知的で。でもその奥に、本の少し、優しくて、暖かい光が覗いて……。
 ――何だか、ちょっとだけマサキ君のことが分かったような気がする。そんなことを思った瞬間、わたしの全身から力が抜けた。じんわりと、心の中から全身が温まるような感覚を味わいながら、するりと、わたしの手から意識が零れ落ちた。
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